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しおりを挟むフレージュはウィリアムに、『私たちの婚約は解消されている』と伝えることができてホッとした。
ウィリアムが気づくまで放っておくことになっていたが、フレージュの新たな婚約発表前に知っておくべきだと思ったから。
しかし、フレージュの言葉をウィリアムは冗談だと思ったらしい。
ウィリアムがため息をつきながら、首を横に振り、フレージュに言った。
「フレージュ、それはよくない。世の中には言っていい冗談と言ってはいけない冗談がある。俺に放っておかれて寂しかったのだろうが、その冗談はダメだな。
だけど許そう。君が俺の気を引くためにそう言ったとちゃんとわかっている。フレージュにそんな可愛いところがあると知ってむしろ嬉しいよ。」
フレージュは唖然とした。
ウィリアムの気を引きたかったから?放っておかれて寂しかったから?
つまり、彼はフレージュに好かれていると思っていたのに、マリエッタと恋愛してみたいと言ったのだ。
当時、まだ数えられるくらいしかウィリアムと会っていなかったため、好きでも嫌いでもなく、可もなく不可もなくといった感じで、『どんな食べ物が好き』とか『どんな本が好き』とか、そんな当たり障りのないような会話しかしていなかった。
にも関わらず、ウィリアムはフレージュに好かれていると思っていて、それなのに婚約者であるフレージュではなく、マリエッタと過ごすことを優先した。
フレージュは自分のことが好きなのだから、大人しく待っているだろうと思っていたのだろう。
まさか、婚約を解消するとは思わずに。
「お前、馬鹿か?」
フレージュは思っていたことが口から出たと思い、自分の口を押えそうになったが、言ったのはフレージュではない。
そこには兄がいた。
「お兄様、ウィリアム様に婚約解消のことを伝えたのですが、信じていただけないようです。」
「みたいだな。……フレージュとの婚約は三か月前に解消されている。両親に確認したらいい。」
フレージュだけでなくその兄のローレンスも認めたことで、ウィリアムは冗談ではないとわかったらしい。
「さ、三か月前?そんな前なんて、嘘だろう?俺はサインした覚えはないぞ?」
「手続きとしてはお前有責の婚約破棄になったからだ。破棄の場合は親のサインだけで可能になる。
まさか、身に覚えがないとは言わないよな?フレージュ以外の女と一緒に過ごしているところは、多くの者が見ていたんだ。」
「べ、別に恋愛関係にあったわけじゃない!友人!友人と一緒にいたくらいで婚約破棄だなんて認められるはずがない!」
「それが認められるんだよ。この学園の婚約者と昼食をとる日には意外と重要な意味がある。その日に別の女と二人でいると、『婚約者と別れたい』という意味になるんだ。
お前がフレージュを待たずにあの女と別の場所に移った日から、お前はフレージュから捨てられても文句は言えないんだよ。」
『婚約者と別れたい』というのはこの三か月で兄が作って密かに広めたものだった。
ウィリアムはまさか、自分が捨てられるとは思っていなかったらしい。
「だが、この婚約は援助もあって……」
「それがわかっていて、最低なことをしたのはお前だろう?詳しいことは父親から聞くんだな。」
呆然としているウィリアムを置いて、フレージュは兄と帰った。
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