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父がトレイル侯爵夫妻に提案することは、兄ローレンスが『考えていること』で『上手くいくかいかないかはわからない』といっていたことである。
「まず、トレイル侯爵の跡継ぎを変えたらどうだろうか。ウィリアム君には弟がいるだろう?」
「ええ。サミュエルといい、ウィリアムの二歳下です。跡継ぎをサミュエルに。なるほど。」
トレイル侯爵は頷きながら、頭の中では目まぐるしく考えているのだろう。
ウィリアムの所業を知ったのはついさっきである。
本来であれば、事実確認をした上でじっくりと考えるべきことなのだが、支援をしてくれている父の提案をこの場で熟考しているらしい。
「サミュエル君には婚約者はまだだったと思うが。それとも婿入り先が決まりそうなのだろうか?」
「いや、まだ決まっていないので、跡継ぎにすることは問題はない。お前、どう思う?」
トレイル侯爵は夫人にも意見を求めた。
「私は、ウィリアムに失望しました。サミュエルは兄のことを教訓にできるでしょう。それに、家庭教師からはサミュエルの方が優秀だと聞いています。」
「そうだな。ウィリアムは周りの信用を取り戻すのは難しいだろう。アイツがどういうつもりでいたにしろ、婚約者であるフレージュ嬢を蔑ろにしたことは貴族としての信用を落とすのと同じことだ。トレイル侯爵家を任せるわけにはいかないな。」
どうやらウィリアムは跡継ぎの座をおろされることが決定したようだ。
「それで、サミュエル君になんだが、うちの次女であるナターシャはどうだろうか?もちろん、今度は二人の相性を確かめて、二人が婚約を望めば、ということになるが。
もし、二人がうまくいかなくても、金も人手もすぐに返せとは言わないから心配しないでくれ。」
「それは願ってもないことだ。是非お願いしたい。」
トレイル侯爵夫妻は父の提案に飛びつきそうな勢いだった。
こうして、長男×長女の婚約は破棄され、次男×次女での縁が繋がりそうであった。
兄の考えたことは、うまくいきそうである。
婚約破棄は禍根を残しやすい。
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文官あるいは騎士になる予定の人。
フレージュは兄の見る目を信じ、紹介されるのを待つことにした。
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