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しおりを挟む数か月後、プリズムは女の子を出産した。
侯爵夫妻は自分たちに息子しかいなかったため、とても喜んでいた。
もちろん、ジュリアスも。
プリズムはまだ18歳だというのに、2人の子の母になった。
ひと月と少しが経ち、プリズムの体調が元に戻り夫婦の営みの許可が出るとジュリアスは貪るようにプリズムを愛した。
繋がることができるのは夫であるジュリアスだけの特権で、その時だけはプリズムが自分からジュリアスを望んでくれていることを知っているからだ。
プリズムは快感に弱い。
それを与えている限り、プリズムはジュリアスを拒絶しない。
そして、まだ小さな子供たちがいることで、侯爵家から出る気はない。
ジュリアスを愛していなくても、それで良かった。
プリズムももう気づいているだろう。
結局、どこに行ったとしても女である限り、誰かに囲われることになると。
やがて、ジュリアスはプリズムを連れて夜会に出ることになった。
プリズムは、多くの視線を感じていたけれど誰とも目を合わさないように気をつけた。
まぁ、ジュリアスがしっかりとガードしているため誰も近づけなかったけど。
ジュリアスから言われているのは、家族以外と踊る必要はないし、誰にもついて行かないようにということだった。
家族とは、実家の父親と兄、ジュリアスと義父の4人の男だけということ。
従兄もダメだし他の男はもっての外。
ダンスを誘ってきた男に妻や婚約者がいた場合、何が起こっても責任を取れないから。
離婚沙汰や婚約解消を避けるためだと言われたが、ジュリアスもコンラッドと同じような心配をしているのだと思った。
人妻なのに、そこまで大ごとになるとは思えなかったプリズムだったが、やがて痛感し始めた。
はじめは王太子だった。
王家の夜会で、王太子は絶対にダンスに誘ってくるとプリズムは言われた。
愛妾になることを断った手前、一度だけダンスに応じることを義父を通じてやり取りがあったらしい。
ジュリアスの予想では、王太子はまだプリズムを諦めていないと言う。
強引な手段は取れないが、ダンス中に口説いてくることは間違いない。
その時はプリズム一人で答えなければならないので、心づもりをしておくようにということだった。
ジュリアスとのダンスを終えると、プリズムの次のダンスを誰が誘うか牽制し合うような空気があったが、王太子がプリズムに向かって一直線にやってきたために道ができた。
「やあ、ジュリアス。こちらがプリズム夫人だね。ようやく会うことができた。
夫人、お近づきに一曲お願いできるだろうか?」
「王太子殿下、お相手をさせていただきますわ。」
プリズムにべったりと張り付くように横にいたジュリアスも、最初で最後だからと送り出した。
プリズムは王太子と踊り始めたが、ほぼ初対面にも関わらず近すぎる距離に寒気がした。
「プリズム、今からでもジュリアスと別れて私のところへ来ないか?大切にするよ。」
「申し訳ございません。私は夫も子供たちも大事に思っておりますので。」
「そうか。ならば、公妾ではどうだ?2年いや1年でもいい。私を満足させてくれないか?
1年経てばジュリアスと子供たちの元に戻ればいい。
君の時間を1年だけ私のために使ってはくれないか?」
公妾とは、既婚女性が王族に望まれて決められた期間だけ閨の相手をする愛妾のようなもの。
もちろん報酬もある。
無理強いはできず、望まれた女性とその夫の承諾が必要になる。
しかし万が一、王族の子供を妊娠しても王族として認められず夫の子供となるという決まりがあるため、他の男の子供を連れ帰ったり、あるいは妊娠して帰った妻を許せなくなる夫もいるという。
承諾した手前、それを理由に離婚することはできない。
もし王太子の公妾になれば、高確率でプリズムを妊娠させてからケージ侯爵家に帰らせるだろう。
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