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しおりを挟むメレディスがサミールのそばにいることで、アミディアが邪魔な婚約者だと周りに思わせようとしていることはわかっていたし、周りを味方につけることで自分たちが純愛だと思わせたかった。
誤算は、サミールが全くメレディスに興味を示さなかったこと。
あのままだと、卒業後に私たちが婚約解消したとしてもサミールがメレディスを選ぶということはあり得なかった。
周りにはどう見えていたとしても、サミールにとってはメレディスは恋人ではなかったのだから。
だから逃げられないようにするためにメレディスは強硬手段に出たのだ。
「彼女があなたと関係を持ったのは、公爵家に嫁ぎたかったから。
だけど、跡継ぎが代わってあなたは子爵になる。
彼女にとっては誤算だったでしょうね。
あなたたちは私と跡継ぎの座を捨てて純愛を取ったと思われているから結婚するしかないわ。
彼女が公爵夫人になるためには、弟さんとやがて産まれる子供が邪魔よ。
弟さんに何かあればあなたが公爵になれるし、子供に何かあれば自分の産む子供が公爵になれる。
公爵や弟さんは言わないだろうから私が言ってあげる。
子爵領に引っ込んで公爵家と関わりを絶つべきよ。
宝石や金銭も、子爵の常識範囲にすべきね。
高価な物は人を雇うお金にも変えられるから気をつけるべきなの。
それと、子供を作るなら確実に自分の子供だと信じられる状況下にすること。
彼女が体を使って誰かを動かすエサにすることも考えられるから。
他人の子を孕む可能性もあるわ。」
私の言うことを、初めは呆然と聞いていたけれど焦って聞いてきた。
「メレディスがそんなことを考えるとは思えないんだが。」
「信じなくてもいいわ。確実ではないし、一応頭の片隅にでも置いておいてくれたら。
でもね、メレディスからあなたに近づいてきたのではなくて?
侯爵令嬢の婚約者がいる公爵令息に、子爵令嬢が。
私に嫉妬させる手伝いをするとでも言ってくれた?あなたの側にいるための口実よね。
いろんなアドバイスも受けたのではないかしら?噂を否定してはダメ、とか。
体の関係も卒業前に最後の思い出を、とでも言って裸で迫られた?確かに純潔だった?」
「……その通りだ。純潔ではなかったように思うけど確認を怠った。
しかも、抱いてくれって言われた時、何か体が高ぶるようなものを飲まされたかもしれない。
すぐに反応してしまって、彼女にソレを握られて、どうしようもなくなったんだ。」
公爵令息のくせに、隙があり過ぎたから子爵令嬢の手腕に落とされた。
私という婚約者がいたのに彼は私に近づかなかったから。私も、近づかなかったから。
体の関係さえなければ、何の関係もないと卒業と同時にメレディスを切ることもできたのに。
彼女は学園外にも男がいたのだから。
「彼女があなたと子爵領で幸せに暮らすつもりなら問題ないわ。
だけど、公爵家に行きたいだとか頼るようなことを口にすれば、怪しんで。
薬を入手する手段があるなら、彼女は危険よ。
私からの最後の忠告、いえ、助言、ね。」
今のサミールはメレディスを愛しているわけではない。
だけど、アミディアの言ったことが今後の結婚生活で芽生えただろう愛情すら、奪ってしまったかもしれない。
申し訳ないとは思うけれど、危機感のないサミールに言わずにはいられなかった。
メレディスが高望みを諦め、子爵領でサミールと穏やかに暮らすことを願おう。
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