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ナフィン侯爵家には開示できる範囲での前侯爵と現侯爵の罪を極秘事項として報告した。
誰が狙われていたかということは、秘密だった。
しかし、御者を殺したことは知られた事実であったため、息子に侯爵位が渡った。
秘密の屋敷にあるものは、一応契約書と品物を照合し、契約書がないものは不要だと新侯爵が放棄したため、全部押収した。
騎士団長は、『アンネ様の髪』が気になり屋敷内を探したが見つけられないまま引き渡した。


カシュー伯爵が捕まったことで伯爵が変わるのも公然とした事実だ。
誰が跡を継ぐんだ?遠縁か?降爵して息子か?そういえば姪は嫁いだのか? 
 
フィルリナが11歳当時の当初の願いは、自分が21歳で15歳のアリシアを養育下におく。数年当主になりその間にアリシアに相応しい婚約者を見つけ、18歳になったアリシアの結婚と同時に伯爵位を譲渡するつもりだった。その後、自分は領地管理を手伝いながらひっそりと暮らそう。そう思っていた。

次にセラフィーネの結婚直前の16歳の時にはもう一つ案ができた。
18歳になったアリシアがフィルリナを介さずに伯爵位を継ぐ。
自分はこのままアラモンド公爵家でセラフィーネの代理を務める。

アラモンド公爵家に来た当初はずっと願ってきた最初の願いが強かった。
セラフィーネの代わりに公爵夫人の仕事を覚えても5年間だけという思いがあった。
でも、リシェルを産みリディアを産みクロードに抱かれ続けて、もう一つの案を願うようになった。
セラフィーネの代理でいいから、このままここにいたい。と。

予定よりも早く問題が解決したことで、二番目の願いを叶えることはできなくなった。
クロードは行きたいところがあれば連れて行くと言ってくれた。嬉しかった。
でも、私が心の底で望んでいた言葉は一度も言われたことがなかった。
結局はそれが答えだろう。…私は抱くことを許された身近にいる専属娼婦、又は愛人。

しかし、心残りがアラモンド公爵家に沢山できてしまって心が揺れる。
でもフィルリナはアラモンド公爵家の者ではない。何の関わりもあってはならないのだ。
子供たちの母親はセラフィーネ、そのセラフィーネの夫がクロードだ。
フィルリナの居場所はない。
子供たちにはそのうち会える?昔お世話した侍女として?
あの子たちに他人行儀に対応されると私は泣いてしまうかもしれない。
それでも成長を見守るために会いたくなる?遠くから見守る方がいいのかな? 


明日、王城へ向かい授爵することになった。
当然、フィルリナとアリシアの籍は復籍する。
王都の屋敷にも顔を出す。誰も顔を知っている人はいないだろう。
アリシアはそこから学園に通うことになるかな。おしゃれに詳しい侍女も必要ね。
領地は上手く管理されている。でも伯爵としてグルっと挨拶回りが必要ね。
屋敷は随分変わってしまったかな?思い出の品があるといいけど。
両親のお墓参りに行かなきゃね。ようやく帰ってこれたよって。
アリシアが継ぐまではあと5年間、いやもうほぼ4年になってる。
伯爵として頑張らなきゃね。








 
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