代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん

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侯爵家に戻ったアンネを義母が叱責した。
 
『あなたが息子を産まないから、シリルが愛人を作らなければいけなくなったのよ。
 ちゃんと男の子を産んでくれたんだから感謝しないと。』
 
『申し訳ございません。気が動転してしまって…愛人の子でも受け入れますわ。
 ですが、お義母様が愛人を認める方だとは知りませんでした。
 よかったですわね、お義父様、シリル。」 
 
みんな、今までの大人しくて優しいアンネとは違うと気づいた。

『でもシリル、私も侯爵家から嫁いできたという立場があるのです。娘も二人います。
 これ以上愛人に子を産ませるのは許しません。男が産まれるとは限らないのですから。
 王族ではないのです。愛人の子が増えると笑われますよ』 

ようやく義両親とシリルは冷静になったようだ。
いくら跡継ぎを産んだとしても、愛人に大きな顔をさせると侯爵家が馬鹿にされる。
正妻と愛人は格が違うのだ。
しかも、愛人を屋敷内に入れてしまった。これは大間違いだ。

『子供たちに会いたいので失礼しますね』

立ち去るアンネにシリルが付いてきた。

『アンネ…その…すまなかった』

『一週間の愛人体験、楽しかったですわ。今まで感じたことがないような快感を教えてくれたの。
 いい経験と思い出になりました』

痛烈な返しを受けて足を止めたシリルを置いて娘たちに会いに行った。




それから2か月後、アンネは妊娠したことに気づいた。
しかし、誰にも知らせずにそれから2か月を過ごした。
気づいた侍女に医師の診察を進められたが、笑顔で躱した。
そして、このことがシリルに伝わった。

『アンネ、妊娠してるのか?…アイツの?嘘だろ?』

『あら。あなたの望みの結果なのに?あなたがそう仕向けたのよ?女の子かしらね?』

アンネはシリルの横を通り過ぎて歩き始めた。

『待て!』

急に肩を掴まれたアンネは驚いて足を滑らせて…階段から転げ落ちた。

『アンネ!』

頭から血を流し、横たわっているアンネに駆け寄ったシリルが抱き起すとアンネが腹部を押さえた。
見る見るうちにドレスの下が血で染まっていく。

『…残念だわ…シリル…あの子は…あなたの子かしらね?…』

自分が助からないと判断したアンネは最期に疑惑の種をシリルに植えつけて亡くなった。

 * * * 

これが、王弟公爵様の妻の母親の最期だよ。


「…なんで、前ナフィン侯爵は、アンネ様が帰った後のことまで知ってたんだ?」

「侍女を買収して報告させていたのと、夫の方が怒鳴り込んできたらしいよ。
 『妊娠させるなんて聞いてない。そのせいで出血が多くて死んだんだ』ってね。」

「…愛人の息子が今の侯爵か?自分の息子だと確認できたんだな。」

「さあ?父は愛人を抱いたことを認めた。他にも男がいたかもしれないと匂わせた。
 シリルがそれを愛人に確認したかは知らない。成長した顔で判断する気だったかもしれない。
 ただ、シリルに似てたかは疑問だね。」

「…まさか前ナフィン侯爵に似てた?」

「どうだろう?そうなら私と彼は異母兄弟だね。似てるかな?
 愛人はアンネ様が亡くなった後も正妻になれなかったのは事実だね。」

騎士団長は額を押さえた。…俺が判断することではない。
するとナフィン侯爵が思い出すように言った。

「父の収集のきっかけがアンネ様の髪ひと房だったんだ。第一号。
 いつも、大切に飾ってあった。物が増えてもそれが一番だった。
 それを見てたからかなぁ。私も欲しくなってしまった。
 ある夜会でアンネ様そっくりの女性がいた。公爵の妻だね。
 父は何年も見てたよ。そしてやっぱり欲しくなった。
 同じ髪色の自分の子が欲しいって。
 父はアンネ様との行為が忘れられないと言っていた。
 一週間だけだったのに、30回近く精を放ったって。アンネ様も何十回と達したらしい。
 彼女の娘なら、抱きたい。子を産ませたいって。
 私はどうせなら人の手垢のついていない少女を自分の好みに仕込みたかった。
 あの髪色を撫でながら、抱きたかったな…」


アンネが切って渡した髪。
これが自分の娘や孫たちをこんな狂気な男たちに狙われた原因だと知ってしまった騎士団長。
ショコルテ公爵に報告すべきかどうか頭を悩ませた。





 
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