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しおりを挟む自分の思いをようやく自覚したクロードは、自分の考えたことが両親と違いがないかを確認した。
「そうだ。そう思っていた。」
「正式に交際を始めればフィーはここに来て子供たちにも会えますね。」
「そうよ~。離婚したばかりだから、少し空けて…2か月後くらいに何かないかしら?」
「夜会や茶会ならどこかであるだろうがな。フィルリアが参加するのに合わせるか。」
「セラさんの侍女としてここにいたことになってるんだから、顔馴染みの設定よ。
久しぶりに会ってセラさんや子供たちの話題を出してもおかしくないし。
楽しそうに会話をして、また会いたいと意思表示するだけで周りが勝手に解釈するわ。
その後、何度かデートやパートナーとして見せつければ、あなたが望んでいるとわかるわ。」
「わかりました。…どうやら私はフィーのことになると頭が働かないみたいで。」
「だろうな。お前の言動が好意と関係ないのなら、どんな女たらしなんだと思ったよ。
リシェルが産まれる前に私が言ったことを覚えてるか?
『ここにいてほしいのなら気持ちを伝えろ』そう言ったはずだ。
お前の自覚がこんなに遅いとは思いもしなかったよ。」
父は何を言っているんだ?と思った記憶がある。ああ、自覚が遅いな。
2か月後、王城での夜会に出席する予定のフィルリナはショコルテ公爵がエスコートするらしい。
義理の伯父と姪。妹の養育者。公爵と伯爵だが、親子のような関係だと周知されている。
クロードがエスコートしたかったが、さすがにまだ無理だった。
みんなが入場後、クロードはパートナーを伴わず、しれっと一人で紛れ込んだ。
離婚したばかりだ。相手がいなくても何となく察してくれる。
両親が公爵とフィルリナの元へ向かうところに一緒に付いて行った。
5人で歓談し、フィルリナと二人で話せないか機会を伺っていた時、公爵が言った。
「カシュー伯爵、エスコートしたのに申し訳ないが足が不調でね。
クロード君、伯爵のダンスの相手を頼めるかい?」
「かしこまりました。カシュー伯爵、お相手願えますか?」
差し出したクロードの手にフィルリナの手が乗った。
ダンスフロアへ向かい、ちょうど始まった曲に合わせて踊りながら小声で話をする。
「フィー、会いたかった。」
そう言ったクロードに驚きの目を向けてからフィルリナは優しく微笑んだ。
「嬉しいです。子供たちは元気ですか?」
「元気だよ。フィーを探す時もある。今度、屋敷においで。」
「…でも。」
「フィー、私はポンコツだった。」
「ポンコツ?」
「そうだ。自分の気持ちに気づかなかった。フィー、愛してる。」
驚いて足が止まりかけたフィルリナを不自然にならない程度に抱きしめて踊る。
「伯爵として頑張っている君には申し訳ないが、次期公爵の妻になってほしい。
もれなく可愛い子供たちも一緒だ。
交際をして婚約をして。結婚はアリシアが16歳になってすぐかな?どう?」
「どう?って…どうして踊りながら言うの?
泣きたいくらい嬉しいのに泣けないし、抱きつきたいのにこれ以上無理じゃない。」
「そうだな。ごめん。
フィーに対してだけポンコツだから、機会を逃さないようにと思ったんだ。
こういうところもポンコツだな。」
「っふふ。涙が引っ込んだわ。
…アリシアの婚約者が決まりそうなの。
カシュー伯爵領の隣の侯爵領の三男で、アリシアの三歳上。
昔、何度か会ったことがあるわ。
もうすぐ学園を卒業するの。卒業したら、仕事を覚えてもらおうと思って。」
「その歳で婚約者はいなかったのか?」
「誰かと一緒で相手の不貞が理由で破棄されたの。」
「…不貞って男側の定番だと思ってたんだけどな…」
踊り終わり両親たちの元へ戻ると、俺たちの表情でわかったのだろう。嬉しそうだ。
フィルリナと母は一度休憩室に行くとフロアを出た。
俺は次はいつデートに誘おうか考えていた。
フィルリナと公爵夫人が廊下を曲がると…フード付きのマントを被り、仮面をつけた者がナイフを突き付けた。
「そこの部屋に入れ!」
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