代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん

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秘密の屋敷は全焼した。屋敷内のあちこちに燃え広がるように準備されていた。
クララ夫人にナフィン侯爵の最期の言葉を伝えると、呆然として涙を流していた。

ひと房の髪も、ひと束の髪も燃えた。
これ以上、髪に惑わされる者はもういない。…はずだ。 
 



王弟の妻が亡くなった事件、学園での令嬢失踪事件にナフィン侯爵3代が関わったと公表され、ナフィン侯爵家は取り潰しとなった。領地は縮小して遠縁に子爵位が与えられた。
クララは娘とひとまず実家に戻ったが、平民になると告げた。
しかし、人さらいに売られるだけだと父に反対され、領地の管理を手助けすることになった。
クララには念のため、髪色に魅せられた親子3代の話をした。
亡き夫に聞いた『祖父と父の思い出』の言葉に繋がった。
『娘とは貴族社会から離れて平民のように暮らし王都には来ない』そう言った。



ショコルテ公爵はアラモンド公爵夫妻とクロード、フィルリナとアリシアを王城に呼んで一連の出来事の終焉を告げた。
『ひと房の髪』はアンネ様が初恋の思い出を欲しがった男に渡したものということにした。
それに心惹かれた息子と孫。悲劇が始まり、ようやく終わりを迎えた。

騎士団長から聞いたアンネ様の昔話を話しても今更だ。
事実だという証拠もないし、フィルリナの愚かな祖父や翻弄された祖母はもういないのだ。


ようやく終わった。気分を明るくしよう。ということで、クロードとフィルリナの婚約が早まった。
いっそのこと、早く発表した方がスッキリする。
ジェフリーとアリシアの婚約もジェフリーが婚約破棄してまだ日が浅いため公表していなかったが、2件まとめて発表することになった。
クロードのあまりに早い婚約発表に、一部の貴族は騒然とした。
娘をクロードの後妻にと考えていた親たちである。
しかし、フィルリナがセラフィーネの侍女としてアラモンド公爵夫妻や子供たちに気に入られていたと知り、納得するしかない。しかも、ショコルテ公爵が娘のように思っているのだ。批判できない。
妹アリシアの婚約者ジェフリーも隣の領地の息子で上手く納まったものだと感心させた。


これでフィルリナも堂々と子供たちに会えるようになるし、結婚の準備も進められる。

フィルリナは久しぶりにアラモンド公爵家に足を踏み入れた。
リシェルは4歳を過ぎ、リディアは2歳半を過ぎた。
何度か会っているし、誕生日の贈り物もしている。
小さいから忘れ去れても仕方がないのに、子供たちは笑顔で走り寄ってきた。

「フィーちゃん、待ってたの!」

小さい手に繋がれてソファに座った。

「ねえ、フィーちゃんがお母様になってくれるって本当?」

嬉しそうな顔で答えを待っているリシェル。反対側で『かーしゃま?』と言ってるリディア。

「ええ。あなたたちのお母様になれたら嬉しいわ。お母様にしてくれる?」

「もちろんよ。いつから呼んでいいの?」

「結婚式はもう少し先なの。ここに住むようになってからかしら?」

それにクロードが答えた。

「別に今からでいいじゃないか。家の中でのことなんだし。」

アラモンド公爵夫妻も笑顔で頷いている。

「やったぁ!リディ、フィーちゃんがお母様よ。」

フィルリナは抱きついてくる娘たちの頭を撫でて、額に口づけた。
そしてはしゃぎ疲れた娘たちが眠るのを見て、フィルリナは帰ることにした。

「送っていくよ。」

迎えに来てくれたので帰りも公爵家の馬車だ。
侍女も連れて来なかったので、馬車の中で二人きり。
そして行き同様にクロードに抱きしめられながら何度も口づけを交わす。

「ああ、早く一緒に暮らしたい…」

「ふふ。そうね。もう少しよ。こういう時間も楽しいわ。」

「そうだけど、二人きりの時間が短い。…子供たちの喜ぶ顔は可愛かったけどな。」



何度かこういった時間を過ごし、いよいよアリシアが16歳を迎えた。
仮継承が認められ、そして1年で学園を卒業した。



ようやくクロードが待ち焦がれた結婚式の日がやっと来たのだ。




 



 
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