代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん

文字の大きさ
40 / 43

40.

しおりを挟む
 
 
まず、夜会のことだ。 

「いつもは持っていない袋を持っていたんです。
 ここで待ってろって部屋に残されました。
 その時、袋に入っていたマントみたいなのを持っていきました。
 しばらくして、手に髪の束を持って戻って来ました。
 それを袋に入れて、私の腰に結び付けました。落とさないように。と。
 帰ろうとした時、荷物検査を言われました。
 探しているのはこれだなと思いました。

 馬車で思わず『誰の?』と聞きました。
 『祖父と父の思い出』と返事がありました。
 『約束だから殺してないよ。髪は伸びる』と。」

「約束とは?」

「6年前に約束しました。
 『誰かに話すと誰かが死ぬ。それは君の妹かな?』と言われました。
 『誰にも話さないので殺さないで』と約束しました。」
 
「失踪した学園の令嬢二人、殺したのは侯爵?」

「…はい。直接見てはいませんが。」

「経緯を教えて。」

「…知らない令嬢に話しかけられました。一つ下の男爵令嬢でした。
 彼女は『あなたの婚約者と体の関係がある。嘘だと思うなら今日も抱き合うから別邸に来て確かめて』
 と裏口から入る方法を教えてくれました。…私は行きませんでした。
 数日後、この日から行方不明になっている令嬢の話を聞きました。先日の男爵令嬢でした。
 婚約者に彼女に会ったのか聞きました。
 彼は『彼女は僕との関係を君にばらすという愚かなことをした。君が来るのを待っていた。
 だけど、君が来なかったから今頃はどこかに埋まってるかな?』と言いました。
 彼が怖くなりました。冗談なのか本気なのか。
 友人に相談しようと思ったんです。ですが、約束した場所に来ませんでした。
 友人も行方不明になりました。
 婚約者がいいました。『彼女に僕のことを相談しようとした?』と。
 待ち合わせ場所が変わったと彼の別邸に連れて行ったそうです。
 彼が誘うふりをすると、喜んで体を差し出したと言いました。
 『友人の婚約者の誘いに乗る女は友人には相応しくない』そう思ったそうです。」
 
「…それで、約束したんだな?話さないから誰も殺すなと。」

「はい。」

「わかった。侯爵を捕らえるから帰らないように。奴は侯爵邸にいたか?」

「後で出かけると行っていましたが…」

黙って聞いていた公爵が言った。

「…髪はどこだ?屋敷にあるのか?」

「わかりませんが、前侯爵様のあのお屋敷ではないかと。収集物もそのままらしいので。」




「…ナフィン侯爵はまだ侯爵邸にいると思うか?」

「いえ、あの屋敷じゃないですか?」

「だよな。行くか。」

「騎士たちを呼んで来ます。」

近くで警戒していた騎士を集め、例の秘密の屋敷へ向かった。

扉をノックして押し開けた。…鍵はかかっていなかった。
薄暗い屋敷内で、明かりがついている部屋があった。
部屋の中にナフィン侯爵はいた。

「ナフィン侯爵、カシュー伯爵暴行容疑であなたを捕えます。」

「やっぱりバレるか。…これが祖父と父が惑わされた髪。」

そう言って、ガラスケースに飾られた、ひと房の髪を見せた。

「祖父が愛した人に貰った髪。それに父も魅せられた。
 幼いころ、僕も目にしたことがあった。ずっと心に残ってた。
 カシュー伯爵を見た時、欲しいって思った。
 攫ったら殺さなきゃならなくなる。殺さない約束をしたから殺せない。
 だから、髪だけもらったんだ。それがこれ。」

違うケースに入れた、カツラにできそうなほどの量の髪がある。

「キレイだよね。でも、手に入れたら欲しいものがなくなってしまった。
 何の興味もなくなったよ。」

「…6年前に二人の令嬢を殺したな?」

「ああ、はい。まだ学生だったし、婚約者は抱けなかったんだよね。
 だけど、平気で股を開く令嬢が何人もいて、捌け口に困らなかったんだ。
 うまく選んでたんだけど、あの令嬢は失敗だったな。クララの友人もね。
 僕はこれでもクララが好きだったんだ。結婚してからは彼女だけだよ。」

いきなり、火のついたランプが床に投げつけられた。
あっちとこっちを分けるように火が燃え広がる。予め染み込ませていたようだ。
火の勢いが激しく近寄れない。
すると、ナフィン侯爵は徐に液体を被った。
 
「クララに伝えて。僕から解放されて幸せにって。」

火の勢いに押され、後ずさる騎士団長と公爵に告げ、ナフィン侯爵は火に巻かれた。
 









 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~

如月あこ
恋愛
 宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。  ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。  懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。  メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。    騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)  ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。 ※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

唯一の味方だった婚約者に裏切られ失意の底で顔も知らぬ相手に身を任せた結果溺愛されました

ララ
恋愛
侯爵家の嫡女として生まれた私は恵まれていた。優しい両親や信頼できる使用人、領民たちに囲まれて。 けれどその幸せは唐突に終わる。 両親が死んでから何もかもが変わってしまった。 叔父を名乗る家族に騙され、奪われた。 今では使用人以下の生活を強いられている。そんな中で唯一の味方だった婚約者にまで裏切られる。 どうして?ーーどうしてこんなことに‥‥?? もう嫌ーー

殿下、今回も遠慮申し上げます

cyaru
恋愛
結婚目前で婚約を解消されてしまった侯爵令嬢ヴィオレッタ。 相手は平民で既に子もいると言われ、その上「側妃となって公務をしてくれ」と微笑まれる。 静かに怒り沈黙をするヴィオレッタ。反対に日を追うごとに窮地に追い込まれる王子レオン。 側近も去り、資金も尽き、事も有ろうか恋人の教育をヴィオレッタに命令をするのだった。 前半は一度目の人生です。 ※作品の都合上、うわぁと思うようなシーンがございます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

私の意地悪な旦那様

柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。 ――《嗜虐趣味》って、なんですの? ※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話 ※ムーンライトノベルズからの転載です

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

処理中です...