代理で子を産む彼女の願いごと

しゃーりん

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まず、夜会のことだ。 

「いつもは持っていない袋を持っていたんです。
 ここで待ってろって部屋に残されました。
 その時、袋に入っていたマントみたいなのを持っていきました。
 しばらくして、手に髪の束を持って戻って来ました。
 それを袋に入れて、私の腰に結び付けました。落とさないように。と。
 帰ろうとした時、荷物検査を言われました。
 探しているのはこれだなと思いました。

 馬車で思わず『誰の?』と聞きました。
 『祖父と父の思い出』と返事がありました。
 『約束だから殺してないよ。髪は伸びる』と。」

「約束とは?」

「6年前に約束しました。
 『誰かに話すと誰かが死ぬ。それは君の妹かな?』と言われました。
 『誰にも話さないので殺さないで』と約束しました。」
 
「失踪した学園の令嬢二人、殺したのは侯爵?」

「…はい。直接見てはいませんが。」

「経緯を教えて。」

「…知らない令嬢に話しかけられました。一つ下の男爵令嬢でした。
 彼女は『あなたの婚約者と体の関係がある。嘘だと思うなら今日も抱き合うから別邸に来て確かめて』
 と裏口から入る方法を教えてくれました。…私は行きませんでした。
 数日後、この日から行方不明になっている令嬢の話を聞きました。先日の男爵令嬢でした。
 婚約者に彼女に会ったのか聞きました。
 彼は『彼女は僕との関係を君にばらすという愚かなことをした。君が来るのを待っていた。
 だけど、君が来なかったから今頃はどこかに埋まってるかな?』と言いました。
 彼が怖くなりました。冗談なのか本気なのか。
 友人に相談しようと思ったんです。ですが、約束した場所に来ませんでした。
 友人も行方不明になりました。
 婚約者がいいました。『彼女に僕のことを相談しようとした?』と。
 待ち合わせ場所が変わったと彼の別邸に連れて行ったそうです。
 彼が誘うふりをすると、喜んで体を差し出したと言いました。
 『友人の婚約者の誘いに乗る女は友人には相応しくない』そう思ったそうです。」
 
「…それで、約束したんだな?話さないから誰も殺すなと。」

「はい。」

「わかった。侯爵を捕らえるから帰らないように。奴は侯爵邸にいたか?」

「後で出かけると行っていましたが…」

黙って聞いていた公爵が言った。

「…髪はどこだ?屋敷にあるのか?」

「わかりませんが、前侯爵様のあのお屋敷ではないかと。収集物もそのままらしいので。」




「…ナフィン侯爵はまだ侯爵邸にいると思うか?」

「いえ、あの屋敷じゃないですか?」

「だよな。行くか。」

「騎士たちを呼んで来ます。」

近くで警戒していた騎士を集め、例の秘密の屋敷へ向かった。

扉をノックして押し開けた。…鍵はかかっていなかった。
薄暗い屋敷内で、明かりがついている部屋があった。
部屋の中にナフィン侯爵はいた。

「ナフィン侯爵、カシュー伯爵暴行容疑であなたを捕えます。」

「やっぱりバレるか。…これが祖父と父が惑わされた髪。」

そう言って、ガラスケースに飾られた、ひと房の髪を見せた。

「祖父が愛した人に貰った髪。それに父も魅せられた。
 幼いころ、僕も目にしたことがあった。ずっと心に残ってた。
 カシュー伯爵を見た時、欲しいって思った。
 攫ったら殺さなきゃならなくなる。殺さない約束をしたから殺せない。
 だから、髪だけもらったんだ。それがこれ。」

違うケースに入れた、カツラにできそうなほどの量の髪がある。

「キレイだよね。でも、手に入れたら欲しいものがなくなってしまった。
 何の興味もなくなったよ。」

「…6年前に二人の令嬢を殺したな?」

「ああ、はい。まだ学生だったし、婚約者は抱けなかったんだよね。
 だけど、平気で股を開く令嬢が何人もいて、捌け口に困らなかったんだ。
 うまく選んでたんだけど、あの令嬢は失敗だったな。クララの友人もね。
 僕はこれでもクララが好きだったんだ。結婚してからは彼女だけだよ。」

いきなり、火のついたランプが床に投げつけられた。
あっちとこっちを分けるように火が燃え広がる。予め染み込ませていたようだ。
火の勢いが激しく近寄れない。
すると、ナフィン侯爵は徐に液体を被った。
 
「クララに伝えて。僕から解放されて幸せにって。」

火の勢いに押され、後ずさる騎士団長と公爵に告げ、ナフィン侯爵は火に巻かれた。
 









 
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