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ディオン以外のみんなは、呆れたようにため息をついた。

国王陛下がディオンに言い聞かせるように話した。


「ディオン、お前はラーガ王国の王女の夫だ。お前は浮気していい身分ではない。
侍女がいなくなったのはお前に誘惑されて相手になったことで解雇されただけだ。そしていろいろ重なった出来事は単なる偶然。あるいは浮気したお前へ侍女たちが嫌がらせをしただけだろう。
そして兄王子が亡くなったことは、継承者争いに負けただけのこと。本人と側近たちの油断と怠慢だ。王女の方が狡猾であっただけだろう。婚約者も何か仕出かしたのだろう。
いずれにせよ、証拠が何もなく、そして王女が次期女王だと認められているのだ。何も問題はない。
あの国ではたまにそういう争いがある。それだけのことだ。」

「で、でも浮気を知られているのなら殺されるんじゃ………」

「殺されるのであれば、無事にこの国まで辿り着けなかっただろう。
一時帰国を促す手紙を書いてほしいと連絡してくるから、独断では帰りにくいのだろうと書いてやったが。
それに、子供ができなくて追い出されそうだ。離縁することになると言うから、ラーガ王国が離縁の意向なのかと思えばお前が勝手に逃げ帰っただけではないか。この国に戻って再婚相手を探すどころではないわ。
とっととラーガ王国へと戻れ!お前から離縁を言い渡せる立場ではないのだ。」

「そ、そんな……私が殺されてもいいのですか?息子ではないですか!」

「ああ。だが、王女に求婚したのはお前だ。女王の夫であれば国を動かせると思ったか?他国の王族であるお前は常に見張られているだろう。信用できる男かどうか。王女の手足になれるかどうか。それにより与えられる仕事も変わるし待遇も変わるだろう。これ以上見限られないように気をつけろ。」
 

見限られれば離縁か死か。

ディオンはこのままラーガ王国へと帰国させられるらしい。部屋を退出させられていた。 


成り行きで聞かなくてもいい話を聞いてしまった気がする。私たちがいてよかったのだろうか。

 


「付き合わせてしまったな。まぁ、あれだ。ディオンは幼い頃から少々考えが浅くてな。いくら勉強ができても国の頂点に立つ素質はないと判断して帝王学も学ばせなかったし、この国の重要なことは何も教えていない。
王領を与えず侯爵家の婿にしようと思ったのも、独断であれこれ勝手にできないようにするためだった。

王女に離縁されて戻って来れたらいいが、無理だろうな。他国の王子と二大派閥から一人ずつの夫。ディオンがいなくなると、また新たな一人を誰にするかで国が荒れる。バランスを考えてディオンを第一王配に選んだはずだ。役に立たなくても王女には問題ないんだ。
ディオンには少し怖がらせるように言ったが、よほど愚かなことを仕出かさない限り殺されはしない。」


あぁ、なるほど。ディオンが形だけの夫に成り果てても王女は構わないのだ。
新たな王配候補のために既に結ばれている婚約が解消されることになると、派閥内でも不満がおきて荒れるかもしれないから。


ディオンとの間に子供ができなかったことは故意か偶々か。 

浮気は侍女の独断か指令によるものか。

兄と婚約者殺しは事実かからかわれただけか。


……ディオンはフロレンティア王女の掌で転がされて遊ばれているのかもしれない。


どうでもいいけど。



 
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