男女の友人関係は成立する?……無理です。

しゃーりん

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フルールに月のものがまた始まった。

心身共に充実した生活を送るようになったからだろうと医師は言った。
必ずとは言えないが、妊娠は可能であるとのことだった。

女性の体の仕組みはよくわからない。 

 
ハークライト侯爵夫妻も、フルールも、言葉にできない喜びを内に秘めたようだった。

健康な夫婦であっても、すぐに妊娠するとは限らない。
まして、ハークライト侯爵夫妻は、フルールの次の子ができなくて辛い日々を10年は過ごしただろう。
フルールに子供を望める可能性ができたことは嬉しいが、それぞれがプレッシャーを与えないよう、感じないように気遣う姿がうかがえた。


アトラスに至っては、正直、子供は必須ではなかった。
フルールがいてくれたらいいのだ。
出産は命の危険が伴う。そんな賭けはしたくない。

しかし、まだ20歳のフルールは自分の子が欲しいだろう。
諦める歳ではないのだから。

ハークライト侯爵家は親戚が少ない。
養子をとるにも、かなりの遠縁と言わざるを得ない。

直系を産めるのであれば、それが一番望ましいのだから。




アトラスは少し発想を変えた。

アトラスとフルールの子がいれば、フルールはアトラスから逃げることはない。
逆に子がいなければ、いつかフルールはアトラスを縛りつけるのが申し訳ないと実家に帰れと言い出しそうだ。

アトラスの気持ちを信じていないわけではない。
しかし、子を望めるアトラスを、次期公爵になるはずだったアトラスを、婿にしたままでいいのかと悩むときがあるのを知っている。
弟ヴィオスと共に公爵家を盛り立てていくべきではないのか、と。
 

だが、フルールも妊娠が可能になったことで、言わば普通の夫婦になったのだ。
子を望めるようになったからには、フルールが産むのはアトラスの子でなければならない。
子ができれば、アトラスに対し申し訳ないという思いもなくなるだろう。

フルールが望むまま、アトラスは子作りに協力した。 


なかなか妊娠には結びつかないだろうとは予想していた。
月のものにも乱れがあり、期待と落胆を半年ほど繰り返した。

だが、思ったよりも早く、その時がやってきた。

 
「おめでとうございます。ご懐妊ですね。」


その時の、フルールの泣きそうな笑顔は忘れられないだろう。


月日が経ち、無事に長男ヴィクトルが誕生した。

これでハークライト侯爵家も直系を繋ぐことができた。
フルールだけでなく、ヴィクトルも役目を無事に果たせた思いがした。
 
フルールの時間をヴィクトルに奪われてしまうが、アトラスも四六時中フルールと一緒にいられるわけではない。
それでも、二人きりの時間はアトラスを見て欲しいがために、フルールとイチャイチャすることを前よりも増やした。

フルールは苦笑しながらも、受け入れてくれていた。

 
しかし、ヴィクトルが誕生して一年が経った頃、フルールが言った。


「ヴィクトルに弟か妹を作ってあげたいわ。」と。 

 

 
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