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しおりを挟む伯爵令嬢ココミアは婚約者である伯爵令息ザッカリーを探していた。
今日は侯爵家の夜会に来ているのだが、いつまで経っても戻ってこないザッカリーにご両親の機嫌が悪くなってきたのだ。
ちなみに、その場には私の両親もいた。
「私が探しに行ってみますね。」
そう言って、ココミアは両家の両親から離れてザッカリーを探していたのだ。
さっきからフロアには見当たらない。庭園か休憩室にいるのかもしれない。
そう思い、テラスから庭園に出ようとした。
すると、テラスには友人ビアンカの婚約者であるデントがいた。
「やあ、ココミア嬢。一人かい?」
「こんばんは、デント様。実はザッカリー様を探しているのですがご存知ありませんか?」
「ザッカリーか?……そう言えば少し前に庭園の右奥の方に行く姿を見かけたな。」
「ありがとうございます。休憩しているのかもしれませんね。行ってみます。」
「ああ、暗いから気をつけて。」
「はい。」
デントから聞いた方向に歩みを進める。
こちらの方は庭園の中でも人気がなく誰も散歩をしていない。
ところどころに照明はあるが、庭園を見せるための照明ではなく道沿いに歩きやすくするためのものだった。
もう既にいないのではないかと思い、引き返そうとした時に、かすかに話し声が聞こえた。
ザッカリーかな?そう思い少し先まで行くと、男女が抱き合っていた。
一瞬、見てはいけないと目を逸らし、その場を去ろうと思った。
だけど、背格好がザッカリーだと瞬時に思い目を向けると、確かにザッカリーだった。
木のそばに照明があり、顔が確認できた。
大きな木を背にした令嬢を抱きしめているように見える。
しかし、よく見ると濃厚なキスをしながら、ザッカリーの手は令嬢のドレスの中にある。
「もう、いいか?」
「ええ。早く入れて。あまり遅くなると怪しまれるわ。」
「そうだな。婚約者がお前ならこんなコソコソしなくて済むのに。
あんな真面目で面白味のない女より、お前と結婚したいよ。」
そう言いながら、手慣れたように令嬢を抱くザッカリーを離れた場所から見ていたココミアは今にも倒れそうだった。
その時、後ろから支えてくれる手があり『俺だ。デントだ。ここから離れよう』そう耳元で囁かれた。
いつの間にかボロボロと涙を流していたココミアは、もう少しで夜会場という手前で立ち止まった。
慌ててハンカチを取り出し、顔を拭こうとしたが手が震えて落としてしまう。
デントはそれを拾い上げてくれたが、落として汚れたココミアのハンカチではなく自分のハンカチを取り出してココミアの涙を拭ってくれた。
手が震えているココミアに気遣ってくれたのだ。
お礼を言おうと口を開こうとしたとき、大きな叫び声が聞こえた。
「どういうことよ!どうして?私の婚約者と私の友人が浮気してるわ!信じられない!」
その声は、ココミアの友人で、デントの婚約者でもあるビアンカの声だった。
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