2 / 13
2.
しおりを挟むビアンカの大きな声に、夜会場にいた人が庭園に目を向ける。
警備の者も、集まって来た。
「ココミア、どういうことよ!私の婚約者を誘惑したの?」
「ビアンカ嬢、誤解だ。そんな大声を出さずに話を聞いてくれ。」
「嫌よ!誤魔化されないわ。一体いつから私は騙されていたのかしら。」
「だから、違うって。」
「あなたは黙っててよ。
何よ。泣いてデント様に縋っていたのかしら?
大人しそうな顔して、人の婚約者を誑かすような女と友人だっただなんて。
もうあなたとは友人でも何でもないわ!」
その時、主催者でもある侯爵が口を挟んだ。
「ご令嬢は何をそんなに騒いでいるのだ?ここは私の屋敷だ。騒動の問題を知りたい。
それに、決めつけるのはどうかと思うんだが?話を聞いてから判断しようではないか。」
侯爵の言葉に、周りがシーンとした時、ココミアとデントがいる後ろの道からザッカリーが現れ、少し後ろから令嬢もやってきた。
ザッカリーから顔を背けたココミアを見て、侯爵は気づいた。
「なるほど。この騒動の原因は今やってきた2人にあるのだな。」
侯爵の言葉に、意味がわからないザッカリーは眉をひそめたようだが、ココミアが近くにいることに気づいてハッと息を飲んだ。
「君たち5人、それから彼らの親も来てるなら一緒についてきなさい。別の場所で話そう。」
侯爵に従って、騒ぎの中心になった私たちは移動をした。
私の両親も、ザッカリーの両親も顔色を悪くしていた。
デントの両親はいるかもしれないが、ビアンカの両親はいないだろう。
ザッカリーの相手の令嬢、レイニー嬢の両親も。
なぜなら、侯爵家の夜会だからだ。
招待は伯爵家以上になる。あとは、仕事の関係者か親戚くらいだ。
招待された者のパートナーが子爵・男爵家の者の場合は参加できるが、その親までは無理である。
ビアンカは子爵令嬢。伯爵令息デントのパートナーである。
レイニーは男爵令嬢。……誰と来たのだろうか。
広めの部屋に案内されて、着席を促された。
親は思った通り、私とザッカリー、デントの両親だけのようだ。
話をするように言われたのはデント。一番冷静のように見えるからだろう。
「テラスで、こちらのココミア嬢に会いました。彼女の婚約者であるザッカリーを知らないか、と。
僕は少し前に庭園の右側の方に歩いて行くのを見たと答えました。
その方向にココミア嬢は向かいました。
見送ってから、ザッカリーの少し前に令嬢が向かったことを思い出しました。
まさか、逢引きの可能性があるのではないか、それをココミア嬢が見るのではないか。
嫌な予感がした僕は、ココミア嬢を追いかけたのです。
庭園の奥の木のそばで、ザッカリーとレイニー嬢が……交わっていました。
それを見てショックを受けたココミア嬢と先ほどの場所まで戻りました。
涙を流しているココミア嬢がハンカチを落としたので、代わりに僕ので涙を拭いました。
そこを僕の婚約者であるビアンカ嬢が見たことで、このような騒ぎになりました。
申し訳ございません。」
デントの謝罪と共に、ココミアも『申し訳ございません』と頭を下げた。
「ふむ。なるほどな。泣いている令嬢にハンカチを渡した。それがこんな騒ぎになったと。」
「違うわ!ザッカリー様がココミアの涙を拭ってたじゃない。浮気だわ。」
ビアンカの言い分に、誰も同意はしない。どうしてそうなるのだろうか。
190
あなたにおすすめの小説
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
【完結】婚約破棄の代償は
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。
王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。
だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。
ーーーーーー
初投稿です。
よろしくお願いします!
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
君を幸せにする、そんな言葉を信じた私が馬鹿だった
白羽天使
恋愛
学園生活も残りわずかとなったある日、アリスは婚約者のフロイドに中庭へと呼び出される。そこで彼が告げたのは、「君に愛はないんだ」という残酷な一言だった。幼いころから将来を約束されていた二人。家同士の結びつきの中で育まれたその関係は、アリスにとって大切な生きる希望だった。フロイドもまた、「君を幸せにする」と繰り返し口にしてくれていたはずだったのに――。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
【完結】可愛いのは誰?
ここ
恋愛
公爵令嬢の私、アリドレア・サイド。王太子妃候補とも言われますが、王太子には愛する人がいますわ。お飾りの王太子妃にはなりたくないのですが、高い身分が邪魔をして、果たして望むように生きられるのでしょうか?
私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?
百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。
だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる