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しおりを挟むビアンカが、涙を拭ってあげることが浮気だと言ったことに対してデントが答えた。
「ココミア嬢の手は震えていて、自分のハンカチを落としてしまったんだ。
僕のハンカチまで落とすと、泣き顔のまま明るい夜会場に向かわないといけないだろう?
だから代わりに拭ってあげただけだ。浮気心があってのものじゃない。」
「だけどっ!……」
言葉を続けようとしたビアンカを遮って、侯爵が言った。
「私はデント君の行為は紳士として当然のことだと思うよ。そうは思わんかね?」
同意を求めたのは、ココミアの両親とデントの両親に対してだ。4人とも頷いている。
ザッカリーの両親は青ざめたままである。
「それをどうしても浮気だと思いたいのであれば、君たちの結婚は上手くはいくまい。
婚約を解消してはどうかね?破棄じゃないよ。デント君に非があるとは思えない。
それはともかく、問題はその前に起こったことだね。
我が家の庭は男女の語らいくらいは許しているが、不快な行為は許可していない。
警備の者に金でも渡したか?これはこちらの落ち度ではあるな。
だが、婚約者と訪れた夜会で浮気をするなど、愚かな者たちだな。
今日が初めてではなさそうだ。」
確かに、人気のない奥まで警備の者に会わなかったのは不思議だった。
広い庭園の随所にいるはずの警備の者がいないことがおかしいのだ。
通常はあの繁みの入口付近で通行止めなのかもしれない。
おそらく、警備担当の中に金で通す者がいるのだろう。男女の逢引きの場所として。
今回は偶然、警備の姿がない時にココミアとデントも通ってしまったのでバレてしまった。
ここ、侯爵家での夜会で、毎回同じようなことが行われている可能性があるのだ。
見張りがいなかったのは警備の者の職務怠慢なのか、あるいは覗き見か。
侯爵は警備の者を許さないだろう。
「うちとしてはザッカリー君の有責で婚約破棄を考えています。同意してくれますか?」
ココミアの父がザッカリーの両親に向かって言った。
ザッカリーの両親は、ここが侯爵家でなければ縋るように嫌だと言ったかもしれない。
元々、事業に関係した婚約でもあったのだ。
ザッカリーの家にとっては、うちは頼みの綱でもあった。
うちとしては、ザッカリーの家じゃないとダメなわけではない。
同じ伯爵家でも、財力には差がある。
「コ、ココミア嬢はそれでいいのか?うちのザッカリーに思いを寄せてくれていたんじゃ……」
「婚約者になったからには良い関係を築きたいと思っていました。
ですが、ザッカリー様は私のことを真面目で面白味がないとおっしゃいました。
そちらの男爵令嬢レイニー様とご結婚なさりたいとのことですので婚約破棄でお願いします。」
ザッカリーの父親はガックリと膝と手をついた。
「うむ。それが妥当だと私も思う。これで決着で良いか?」
侯爵の言葉に私たちは頷いた。
解散しようとした時に、ビアンカがココミアを見て笑いながら言った。
「だから人の婚約者に縋ろうとしたの?だけど私がいるの。婚約破棄、おめでとう。」
その言葉を聞いたデントは非常に不快に感じた。デントの両親もだった。侯爵も……
「すまないが、ビアンカ嬢とザッカリーの婚約も見直した方が良さそうだ。
後日、君の父上にも申し入れるよ。」
デントの父の言葉に、ビアンカは驚いた。
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