4 / 13
4.
しおりを挟む婚約を見直す。つまり、解消することを遠回しに言われたビアンカは狼狽えた。
「ど、どうしてですか?私は悪くないのに!」
「悪くない?本当にそう思っているのか?
すまないが、君と私たち家族は合わないようだ。
嫁に来てくれたとしても、考え方が違うとデントも私たちも疲れてしまうだろう。」
「そんなことないです。今までデント様とは言い争いもしたことがありません!」
みんなの目がデントに移る。デントはため息をついて言った。
「君はいつも自分の意見が正しいのだと僕の言うことを否定するからね。
いつか恥をかいたとしても、それも勉強のうちだと思って訂正するのを止めたんだ。
でもやっぱり、それも間違いだった。
君の失敗は僕の評価にも繋がる。
このまま君が婚約者だと、うちの伯爵家にも影響するだろう。婚約は解消しよう。」
「え……ええ?どうして?意味がわからないわ。
私の言うことを聞いてくれてたのなら、そのままでいいじゃない。
何がダメなのかがサッパリわからないわ。気にする必要はないわ。」
わからないのに、自分の意見を押し通すそういうところだ。ココミアはそう思った。
確かにビアンカは自分が正しいと思いがちだし怒りっぽい。
だけど、おとなしいココミアはその心の強さが羨ましく思えたのだ。
ココミアは自分の意見を言うのが苦手。
だから、ビアンカに従っていると楽に思えて友人として側にいた。
でも……もうその関係も終わりになる。
誘惑した・騙した・誑かした・友人ではない……いろいろ言われた。
ココミアのことを大切な友人として信用していないからこそ、出た言葉だろう。
何があったのかと涙の理由を聞いてくれたり、心配してくれることはなかった。
それどころか笑いながら、婚約破棄をおめでとうって言った。
ビアンカはココミアのことを見下して自分が優位にたちたい。そんな印象を抱かせた。
それは、ここにいるみんなが感じているようだ。
「そのままでいい?気にする必要はない?
君は自分の言動を振り返り反省する気もないんだな。
浮気を疑われたことも、ココミア嬢を友人だと言いながら心配する素振りすらしなかったことも。
君の、僕たちに対する信頼関係はないに等しいと感じたよ。」
この騒動の決着を図るためか、侯爵がビアンカに向けてとどめを刺した。
「君は子爵令嬢だろう?
侯爵家の夜会でこんな大きな騒動の原因になったのは君の叫び声だ。
高位貴族は騒動を嫌うため、穏便に済ませようとする。
君はいかにも下位貴族らしい行動を取ったな。注目を浴びたかったか?
そんな君の言動は伯爵家の嫁には相応しくないだろうな。
先ほども言ったが、君たちの結婚は上手くはいくまい。
既に今日の出席者は君との関わりを断るだろう。
もう、高位貴族の夜会に出席することは難しくなる。
君のお父上にも騒動を起こしたことを伝えさせてもらう。
婚約が解消であるうちに受け入れることを勧めるよ。
ゴネるのならば君の有責での破棄になるように私はデント君の伯爵家を支持する。
それくらい君の仕出かしたことは大きいのだよ。
その責任が婚約解消だと理解すればいい。わかったら帰りなさい。」
侯爵にそう言われるとビアンカもさすがに反論できなかったようで、部屋から出て行った。
若者の愚かな失態と笑い話にするか厳しい処分にするかは夜会を台無しにされた侯爵次第だというのに、ビアンカが謝りもしなかったからであろう。
侯爵は厳しい処分を選んだようだ。それでも、最悪の処分ではない。
俯いたまま一言も発することを許されていないザッカリーとレイニーだけを残してようやく帰ることになった。
残された2人には、どういう経緯で逢引き場所を知ったのか、聞き出す必要があるからだろう。
ココミアとザッカリーは婚約破棄、ビアンカとデントは婚約解消。
2組の縁組が解消されることになった。
231
あなたにおすすめの小説
そのご令嬢、婚約破棄されました。
玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。
婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。
その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。
よくある婚約破棄の、一幕。
※小説家になろう にも掲載しています。
王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
見えるものしか見ないから
mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。
第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……
ジルの身の丈
ひづき
恋愛
ジルは貴族の屋敷で働く下女だ。
身の程、相応、身の丈といった言葉を常に考えている真面目なジル。
ある日同僚が旦那様と不倫して、奥様が突然死。
同僚が後妻に収まった途端、突然解雇され、ジルは途方に暮れた。
そこに現れたのは亡くなった奥様の弟君で───
※悩んだ末取り敢えず恋愛カテゴリに入れましたが、恋愛色は薄めです。
【短編】お姉さまは愚弟を赦さない
宇水涼麻
恋愛
この国の第1王子であるザリアートが学園のダンスパーティーの席で、婚約者であるエレノアを声高に呼びつけた。
そして、テンプレのように婚約破棄を言い渡した。
すぐに了承し会場を出ようとするエレノアをザリアートが引き止める。
そこへ颯爽と3人の淑女が現れた。美しく気高く凛々しい彼女たちは何者なのか?
短編にしては長めになってしまいました。
西洋ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。
完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる