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しおりを挟む婚約を見直す。つまり、解消することを遠回しに言われたビアンカは狼狽えた。
「ど、どうしてですか?私は悪くないのに!」
「悪くない?本当にそう思っているのか?
すまないが、君と私たち家族は合わないようだ。
嫁に来てくれたとしても、考え方が違うとデントも私たちも疲れてしまうだろう。」
「そんなことないです。今までデント様とは言い争いもしたことがありません!」
みんなの目がデントに移る。デントはため息をついて言った。
「君はいつも自分の意見が正しいのだと僕の言うことを否定するからね。
いつか恥をかいたとしても、それも勉強のうちだと思って訂正するのを止めたんだ。
でもやっぱり、それも間違いだった。
君の失敗は僕の評価にも繋がる。
このまま君が婚約者だと、うちの伯爵家にも影響するだろう。婚約は解消しよう。」
「え……ええ?どうして?意味がわからないわ。
私の言うことを聞いてくれてたのなら、そのままでいいじゃない。
何がダメなのかがサッパリわからないわ。気にする必要はないわ。」
わからないのに、自分の意見を押し通すそういうところだ。ココミアはそう思った。
確かにビアンカは自分が正しいと思いがちだし怒りっぽい。
だけど、おとなしいココミアはその心の強さが羨ましく思えたのだ。
ココミアは自分の意見を言うのが苦手。
だから、ビアンカに従っていると楽に思えて友人として側にいた。
でも……もうその関係も終わりになる。
誘惑した・騙した・誑かした・友人ではない……いろいろ言われた。
ココミアのことを大切な友人として信用していないからこそ、出た言葉だろう。
何があったのかと涙の理由を聞いてくれたり、心配してくれることはなかった。
それどころか笑いながら、婚約破棄をおめでとうって言った。
ビアンカはココミアのことを見下して自分が優位にたちたい。そんな印象を抱かせた。
それは、ここにいるみんなが感じているようだ。
「そのままでいい?気にする必要はない?
君は自分の言動を振り返り反省する気もないんだな。
浮気を疑われたことも、ココミア嬢を友人だと言いながら心配する素振りすらしなかったことも。
君の、僕たちに対する信頼関係はないに等しいと感じたよ。」
この騒動の決着を図るためか、侯爵がビアンカに向けてとどめを刺した。
「君は子爵令嬢だろう?
侯爵家の夜会でこんな大きな騒動の原因になったのは君の叫び声だ。
高位貴族は騒動を嫌うため、穏便に済ませようとする。
君はいかにも下位貴族らしい行動を取ったな。注目を浴びたかったか?
そんな君の言動は伯爵家の嫁には相応しくないだろうな。
先ほども言ったが、君たちの結婚は上手くはいくまい。
既に今日の出席者は君との関わりを断るだろう。
もう、高位貴族の夜会に出席することは難しくなる。
君のお父上にも騒動を起こしたことを伝えさせてもらう。
婚約が解消であるうちに受け入れることを勧めるよ。
ゴネるのならば君の有責での破棄になるように私はデント君の伯爵家を支持する。
それくらい君の仕出かしたことは大きいのだよ。
その責任が婚約解消だと理解すればいい。わかったら帰りなさい。」
侯爵にそう言われるとビアンカもさすがに反論できなかったようで、部屋から出て行った。
若者の愚かな失態と笑い話にするか厳しい処分にするかは夜会を台無しにされた侯爵次第だというのに、ビアンカが謝りもしなかったからであろう。
侯爵は厳しい処分を選んだようだ。それでも、最悪の処分ではない。
俯いたまま一言も発することを許されていないザッカリーとレイニーだけを残してようやく帰ることになった。
残された2人には、どういう経緯で逢引き場所を知ったのか、聞き出す必要があるからだろう。
ココミアとザッカリーは婚約破棄、ビアンカとデントは婚約解消。
2組の縁組が解消されることになった。
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