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しおりを挟む侯爵家での夜会の翌日、ココミアとザッカリーの婚約破棄の手続きは終えた。
慰謝料を払うとザッカリーの伯爵家は厳しい財政状況になるだろう。
しかし、それが貴族の政略結婚。婚約時の浮気発覚は致命的になる。
信用できない相手とは縁を切る。
優位に立つ側が裏切られた場合は、そうするのが当然の対応だった。
ココミアとビアンカは学園の2年生、ザッカリーとレイニー、デントは学園の3年生である。
週明けに学園に行ったココミアは戸惑った。
ビアンカとはもう一緒には過ごせない。それは当然だ。
だが、他の友人であった令嬢たちまでココミアを非難するかのように睨むのだ。
ビアンカがこの間の夜会について、話したのだろう。
だけど、他の令嬢まで全員がビアンカの言うことに同調するとは思っていなかった。
元々、ビアンカを中心にできた友人たちだったこともあり、子爵・男爵令嬢がほとんど。
伯爵令嬢はココミアともう一人いたが、彼女もビアンカの味方らしい。
少し寂しいが、ココミアはビアンカに同調する令嬢たちに弁明するよりも一人でいることを選んだ。
前から少しずつビアンカから離れることを考えていたため、持参した本を読む。
そんなココミアを見て、ビアンカたちはコソコソと、しかしクラスメイトに聞こえるように非難する。
『ビアンカ様の婚約者に縋りついたのに堂々と顔を見せるなんて』
『ビアンカ様の婚約をダメにしておいて謝りにも来ないなんて』
『侯爵様にも媚びを売って味方につけたなんて』
『爵位の低い私たちを見下していただなんて』
『根暗な性格だから婚約者に裏切られたのよ』
『友人だと思っていたのに侯爵様にビアンカ様の援護もしないなんて』
『ビアンカ様の行動が正しいわ』
『ひょっとして自分も婚約者を裏切っていたんじゃない?』
5日ほど、ビアンカとその周りの令嬢たちが同じようなことを言いふらしたせいで、学園中に噂が広まるのは時間の問題だった。
学園にいる令嬢・令息は、圧倒的に子爵・男爵家が多い。
その者たちはビアンカが都合の良いように言いふらした内容を信じて、ココミアを睨んでいた。
しかし、ココミアは何を言われても、どんな噂になろうと独りで耐えていた。
ビアンカの言い分だけを信じている者たちに、ココミアが何を言っても無意味に思えたから。
やがて、噂の真偽を親や正式な情報を持っている者に確認した伯爵家以上の令息・令嬢は、ビアンカに都合の良い作り話に騙されている愚かな下位貴族たちに憐れむ思いを抱く。
彼らはココミアとデントの伯爵家及び夜会の開催者である侯爵に盾突いたも同然なのだ。
もちろん、高位貴族の中には、非難に加わった貴族家との付き合いを断るところも出てくる。
自分たちの行動が、実家に影響を及ぼすとは全く考えていないのだ。
翌週、ココミアの孤独は終わりを迎えた。
「ココミア様、私たちと一緒に課題をしませんか?」
救いの手が差し伸べられた。
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