あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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メルリーはナディア様からアイリーンさんの話を聞いても、夫ブレイズの所属する第三部隊、あるいは騎士団上層部の考えや対応が間違っていると思っていた。 

何故、メルリーが不快さを我慢しなければならないのか。

しかし、一番メルリーを守るべきブレイズが悪いことをしていると思っていない。

そこが問題だった。




「おかえりなさい。お疲れさまでした。」


アイリーンさんのことで言い合いになってから、ブレイズは不機嫌なままだった。
今まで、夜勤や親睦会以外では、早番・遅番ごとに決まった時間に帰ってきていた。 

なので、結婚後のブレイズは浮気をしていないと信じていた。

だが、最近は三日に一度は少し遅めに帰ってくる。

娼婦で性欲の発散をしているのではないか、とメルリーは思っていた。
あれからブレイズはメルリーを抱いていないから。

後ろめたいせいか、ブレイズはメルリーをちゃんと見ずに逃げるように浴室に向かうから。

ブレイズの中では、娼婦を抱くことも浮気ではないらしい。




 
もう、私たち夫婦は修復不可能なのかもしれない。

ブレイズが既婚者ではなくなることが、第三部隊にとっては望ましいし、アイリーンさんにとっても妻から奪ってやったと満足するのではないかと思う。
 
メルリーだけが傷を負うことになる。

アイリーンさんの問題は何も解決しないが、それはもうメルリーには関係なくなる。


再び、訓練場を訪れて、アイリーンさんにキスをやめてくれと言う気も失せてしまった。




ブレイズと今後のことを話し合いたいと思いながらも切り出せない日々が続き、また親睦会の日が来た。

メルリーはもうブレイズを起きて待たない。
彼がメルリーの懇願を無視して、アイリーンさんとキスをするのは間違いないから。

夜中の言い争いは、もうごめんだった。



うとうとと眠りが浅かったがいつの間にか深く眠っていたらしい。

急に体をまさぐられて驚いた。
親睦会から帰って来たブレイズが、メルリーを抱こうとしているのだ。 

ここで拒絶したら、完全に夫婦仲は終わるだろう。
それがわかっているのに、いや、わかっているからか、メルリーは拒絶しなかった。

久しぶりにブレイズに求められて嬉しいと思ってしまったからだった。

状況的には別れた方が、メルリーにとっていいはずだとわかっている。
けれど、メルリーはまだブレイズが好きだった。

性急にメルリーの体を慣らした後、ブレイズはいつになく激しくメルリーを抱いた。
久しぶりに何度も求められ、嬉しいと感じた。



その後、ブレイズの不機嫌さはなくなった。

以前のように優しく、いつもの時間に帰ってきてメルリーを抱く。
まるで新婚当初のような、甘い雰囲気も戻り、休日には手を繋いで出かけたりもした。

そう。
アイリーンさんとのことを知らなければ、メルリーはそこそこ幸せな毎日を送っていたのだ。
憂鬱だったのは、あのお茶会だけで。

夫の行動を知らないことで笑われていたと知った今、一生知らないままでよかったと思う時もある。
  
だけど、知ってしまった。
ブレイズもそのことを知っているのに、メルリーを再び大切にしてくれるようになったのは、アイリーンさんのキスを受け入れることをやめる気になったのだろうか。
 

今の幸せを壊したくなくて、ブレイズに聞くことはできなかった。
 

 
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