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しおりを挟む一方その頃、ナディアの夫イーサンは、ブレイズの妻メルリーと思われる女性がナディアに連れられて訓練場から去る後ろ姿を見て、ホッとしていた。
イーサンは、ナディアからメルリーを連れて訓練場に来る話を聞いていた。
メルリーがアイリーンに、ブレイズにキスをしないように言いに来るということを。
イーサンも、最近のアイリーンは度が過ぎると思っていた。
ブレイズが独身ならまだしも、既婚者なのだ。
妻であるメルリーが不快に思うのも当然のことだろう。
しかし、当の本人ブレイズが気にしていないせいか、アイリーンは大胆になってきている。
そろそろ何とかするべきではないか、と思っていたところにメルリーがようやく親睦会でのキスの件を知ったということを聞き、妻側から非難されることはアイリーンの歯止めのきっかけになるのではないかと思っていた。
ところが、アイリーンはメルリーの顔を知っていたらしく、ブレイズを抱き寄せてキスをして見せた。
明らかにわざとで、まるで宣戦布告かのようだった。
ひょっとして、アイリーンはブレイズに本気なのか?
それとも、夫婦仲を壊したいだけか?
ひとまず、イーサンはナディアに『ここに来るな』と目配せをして、ナディアはメルリーを連れて行ってくれた。
アイリーンが訓練中にキスをしたせいで、観客に見られていた。
ここでメルリーと揉めることになれば、王都中に知れ渡るだろう。
『騎士が同僚の女騎士と不倫関係にあるのを妻が目の当たりにして修羅場になった。』と。
事実がどうでも、傍から見ればそう見えるだろう。
アイリーンとブレイズは自業自得なところがある。
しかし、メルリーは別だ。
彼女は元は裕福な子爵令嬢だという。
メルリーを巻き込むわけにはいかない。
これは、愚かな騎士団と愚かなブレイズ、そして悪意のあるアイリーンが非難されるべきなのだ。
ブレイズとメルリーは、ブレイズが意識を改めない限り、このままでは離婚する可能性が高いとイーサンは思っている。
だから、メルリーは守るべきだと思い、訓練場から去らせたのだ。
この判断は間違っていないと思いたい。
「ブレイズ、お前、少しはアイリーンに抵抗する姿勢を見せろよ。」
「そんなの、今更だよ。」
「わかっているのか?今日のキスは、酔っていたという言い訳が出来ないキスだぞ?」
「あ……」
「お前、アイリーンに慣らされ過ぎだよ。」
ブレイズはムシャクシャしたのか頭を掻き乱した。
「キスくらい、浮気に入らないだろ?そんなこと言ったら、隊のみんなも同罪じゃないか。俺よりも前に第三に入隊した奴はみんなアイリーンとキスしてるのに。なのに、今更なんなんだよ。」
「度が過ぎてる。お前とアイリーンのキスは男と女のキスで、酔っ払いって言葉で済ませられないぞ。」
ブチューとした感じのキスはされたが、ブレイズ以外、誰も唇を開いて舌を絡ませたことなどない。
「……なら、アンタが変わるか?」
「変わる気はない。彼女の方に問題があるのはわかっているだろ?酔っ払ったことを言い訳にキス魔を装っているだけだ。最近じゃ、一杯を飲み切る前にお前に絡んでるじゃないか。
受け入れ続けるとお前はいずれ自分を見失うか、後悔することになるかもしれないぞ。」
「後悔って何を?」
「奥さんを哀しませているだろう?」
「そもそも、メルリーが知ったのは、隊のみんなが家でペラペラ話したからだろう?メルリーを哀しませることになったのは隊のせいじゃないかっ!」
ブレイズはそう言って去って行ったが、責任転嫁もいいところだ。
確かに俺たちも悪いし、アイリーンも悪い。
だが、お前にも問題があると気づけよ。
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