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しおりを挟む翌日、家に帰ってきたブレイズにメルリーは言った。
「アイリーンさんと浮気したそうね。」
「はぁ?……なんだそれ。したわけないだろ?またお茶会ネタか?信じるなよ。」
ブレイズは浮気をしていないと主張した。
これは少し予想外だった。
噂になっているのだから、いずれメルリーの耳に入ることはブレイズもわかっていたはず。
問われたら、潔く認めるのではないかと思っていた。
「浮気、したんでしょ?」
「してないって言ってるだろ?」
どういうことだろう。
嘘のような、本当のような。
態度が微妙で確信には至らなかった。
それでも、メルリーは毎日のように聞いた。
「ねぇ、どうして浮気を認めないの?」
「してないからだよっ!」
まだ、認めない。
次の日も聞いた。
「アイリーンさんの部屋に入ったのよね?」
「入ったけど、出た。」
そりゃ、入ったら出るでしょう。
その次の日も聞いた。
「キス、したんでしょう?」
「キスはしたけど、浮気はしてないっ!」
キスも浮気だとメルリーは思っている。
そのまた次の日も聞いた。
「浮気したのよね?」
「いいかげんにしろっ!俺が信じられないのか?」
「どこを信じろと?」
メルリーがそう言うと、ブレイズは傷ついた顔をした。
メルリーを傷つけ続けてきたブレイズが、そんな顔をする資格はないと冷めた思いだった。
「浮気を認めなさいよっ!」
メルリーはだんだん、自分がムキになっていると思っていた。
浮気したと言わせて、どうしたいのか。
浮気していないというブレイズを認めず、問いつめて険悪になるばかり。
「アイリーンさんとは結婚前からの付き合いなんでしょう?」
何が本当なんだろう。
「アイリーンさんは遊び相手の一人だったのよね?」
本気でそう思っていたわけじゃなかった。
しかし、ブレイズの反応は思っていたのと違った。
「え……?まさか、そんな、はずはない、じゃないか。」
まるで、思いがけないことを言われたが、遊んだ中にいた可能性もあるといったような。
騎士になってからアイリーンさんと認識した上で遊んだわけではなく、学生時代に相手をしたことがあるかもしれないと記憶を辿るような反応をしたのだ。
……ブレイズはいったい、一夜限りの遊びをどれだけしてきたのだろうか。
「積極的なアイリーンさんに惹かれたの?」
「……ああ、そうだなっ!キスは上手いし、そそる声でイクし、慣れてるしなっ!」
ブレイズが自棄になって言った言葉は浮気を認めたも同然だった。
本人も気づいたのか、ハッとした顔でメルリーを見た。
遊び慣れたブレイズは、メルリーとの閨に不満があるのだろうということにも気づかされてしまった。
他の女性と比べるような発言は聞きたくなかった。
ブレイズにとって、性欲の発散は息をすることの次に大事なのではないかと思うほどのことだ。
それなのに、メルリーではそれに応えられていないらしい。
アイリーンなら、満足できるのにと言われた気がした。
メルリーは自分から切り出すことにした。
「もう、私たちダメね。離婚、しましょう。」
この言葉が、ブレイズへの最後の贈り物。
「……ああ。」
受け入れたブレイズの言葉も、メルリーへの最後の贈り物になる。
翌日に離婚届を用意して先にメルリーが記入しておいた。
夜にブレイズが帰宅し、離婚届を渡した。
次の朝、ブレイズが記入した離婚届を確認し、メルリーは届を出したらそのまま実家に帰ると告げた。
「さようなら。」
『幸せだった』『楽しかった』『ありがとう』どの言葉も、言えない。
『アイリーンさんとお幸せに』なんて、もっと言えない。
こうしてメルリーとブレイズの結婚は、一年半も続かずに終えることになった。
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