あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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今頃、メルリーは離婚届を出しているだろうか。

ブレイズはメルリーとの離婚を、もう少し話し合うべきだったと後悔する気持ちと、浮気を疑われ続けてウンザリしていたのでホッとした気持ちを持っていた。 


メルリーが嫌な思いをしていたことはわかっている。
しかし、キスがそこまで目くじらを立てるようなことだとは思っていなかった。
 
おそらく、ブレイズは自分が世間一般の考えからズレているのだろうとようやく気づいて、アイリーンの部屋でやらかした後に反省し、その後はメルリーとやり直すつもりで接していた。


メルリーに不満などなかった。
可愛くて、優しくて、嘘が嫌いで正直に話せば許してくれる。

そのうち子供ができて、男の子なら剣を教えて、女の子なら嫌がられるまで抱っこして歩きたい。
そんな幸せを思い描けるくらい、メルリーが好きだった。
浮気をしない約束も守っているつもりだった。

メルリーとの幸せを守るために、もう、アイリーンとキスをするのはやめようと決意していた。


その矢先、アイリーンの部屋に行った時のことが噂になっていると知った。

マズイとは思ったが、メルリーなら許してくれると思っていた。
婚約時代の遊びを許してくれた彼女なら、浮気疑惑があってもブレイズの言うことを信じてくれる。
最近は、二人の関係が以前のようによくなっていたし、問題はない、と。
 
だが、メルリーはブレイズが浮気したと信じ込んでいた。

毎日毎日、浮気を問い詰められた。
 
まったく、メルリーに教えたのは誰なのか。
どうせ、あのお茶会の噂話になったのだろうと思った。

噂話など、途中で捻じ曲げられるものだ。

メルリーの耳に入った話が真実とは限らない。

そもそも、アイリーンの部屋の中での出来事を、他人が知るはずもないのだから。

 
しかし、浮気浮気と言われ続けてウンザリしていたこともあり、売り言葉に買い言葉で浮気を認めてしまうような発言をしてしまった。

その時のメルリーの顔を忘れられない。

彼女はブレイズの浮気を問い詰めながらも、ほんの少し、浮気は嘘だと信じたい思いもあったのだろう。

それなのに、ブレイズの我慢が足りなかった。

いや違う。
ちゃんと、事実を話せばよかったのだと今なら思う。
 



あの親睦会の日、いつものようにブレイズにキスを迫るアイリーンをイーサンが窘めた。
ブレイズをアイリーンの席から離し、アイリーンはムッとしながらもおとなしく飲み続けていた。

こんな簡単なことだったのか。

ブレイズは今までアイリーンのキスを受け入れていたのは何だったのだろうと思った。

しかし帰りに、ひどく酔ったアイリーンを送っていく羽目になった。 
みんなが先に帰ってしまったからだ。


アイリーンを部屋の中まで送り届けて帰るつもりだったが、彼女に引き寄せられて共にベッドに倒れこんだ。
彼女の腕が首に巻きつき、濃厚なキスをされて酔いしれた。

手を胸に引き寄せられて、揉むように誘導された。

彼女の甘い吐息に、手が勝手に動いた。悦ばせたい、と。

彼女の下半身にも手を伸ばし、何人もの女の体を知っているブレイズは簡単に感度のいいところに触れて刺激した。

アイリーンは程なくして、嬌声をあげて達した。

彼女の中で指が締め付けられるのと同時に、自分は何をしているのかと冷水を浴びたように頭が冷えた。


いつものブレイズの認識では、性器を入れたわけではないので浮気ではない。
しかし、コレはマズいと思い、慌ててアイリーンの部屋から出た。
 

その後、アイリーンが窓から手を振り何かを言っていたが、焦っていた頭に声は入って来ず、軽く手を振り返して家に帰った。


そして高ぶっていた体でメルリーを抱いた。

心から、反省した。
 


 
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