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しおりを挟むメルリーは離婚届を書いた日、実家に『明日帰る』という手紙を送っていた。
そして翌日、離婚届を提出してそのまま、王都にあるバーティ子爵家へと向かったのだ。
「おかえりなさい、メルリー。」
母が迎え入れてくれて、メルリーは家に帰ってきたとホッとした。
「ただいま戻りました、お母様。お元気でしたか?」
「ええ。メルリーは……少し痩せたわね。」
ここ十日ほど、あまり食べていなかったから。
「お話があって。お父様もいらっしゃるかしら?」
「あなたが帰ってくると知って予定を変更していたわ。」
母が微笑みながらそう言った。
父の執務室へと向かいながら、メルリーは母も噂を耳にしたのだろうとわかった。
いつもの明るい母とは少し違ったから。
わざわざ親の耳にも入れてくれるような親切だかおせっかいだかの貴族は多いのだ。
父の執務室に入ると、父はメルリーを優しく抱きしめて『おかえり』と言ってくれた。
ソファに座ってお茶を一口飲み、メルリーは切り出した。
「先ほど、ブレイズとの離婚届を提出してきました。事前に相談もせず、申し訳ありません。」
「お前がそう決めたのだったら、それでいい。ただ、出回っている噂は事実なのか?」
「ブレイズは頑なに認めようとはしませんでしたが、それでも浮気と思って相違ない関係はあるような発言をした後、離婚に同意しましたので。」
「ほぼ、黒か。なんでまた同僚なんかと。普通、離婚覚悟でないと手身近な女になんか手を出すもんじゃないのに。それまでは上手くいっていたんだろう?」
両親には婚約時代からのブレイズの遊びのことを話したことはなかったが、もういいだろうと思った。
「ブレイズは、結婚前から遊び相手の女性が大勢いました。咎めたら、結婚前の私に手を出せないので、性欲を発散する遊び相手を認めてほしい、結婚後は遊ばないからと約束しました。」
やはり父は知らなかったらしい。驚いていた。
「遊び相手?!そんな関係の女がいたのか?娼婦ではなく?」
「娼婦より遊び相手の方が安全だから、と。
お相手の女性も遊びと割り切っているので問題ないと言っていました。結婚してから少し前までは浮気をしている様子はありませんでした。
でも……噂になっている女性の騎士とは結婚前から結婚後もずっと、キスをする関係だったそうです。」
「は……?浮気じゃないか。」
そうよね。男の父でもキスする関係は浮気だという認識なのだから、ブレイズがおかしいと思う。
「ブレイズの中では浮気ではなかったのです。その女性が酔ってキス魔になるとかで、ブレイズがキスを受け入れる役割を隊員から任されたということでした。
それを私は数か月前まで知りませんでしたので、同じ隊にいる夫人方からお茶会でずっと笑われていました。」
「メルリーがそのことを知った後も、あの男はやめなかったのか?」
「はい。それで言い合いになって、もうダメだと思ったのですが、突然、ブレイズが以前のように優しくなって、私が嫌がったからわかってくれたのかと嬉しく思っていました。もう、大丈夫なのだと。
ですが、ブレイズが優しくなったのは、その女騎士の部屋に行った翌日からだと知りました。」
「浮気をしたが、お前の元に戻ろうとしていたのに、噂になってしまったということか。」
「そのようです。私は『寝取られ妻』と呼ばれているそうです。」
「何が大切かということを後で気づいても遅いんだ。悪かったな。あんな男との結婚を勧めて。」
メルリーは首を横に振った。
婚約時代から軽んじられていたのに、そんなものだと思ってしまった自分が悪いのだから。
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