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しおりを挟むメルリーは、伯爵家で倒れたこと以外は全て両親に話した。
「騎士の妻になるのだから、浮気は覚悟していたつもりでした。
ですが、結婚前の約束をブレイズは守ってくれると愚かにも信じていたのです。
こんなことなら、どこの誰かも知らない一夜の遊びや、娼婦の方がまだましでした。」
キスくらいで、一度の浮気くらいで、と離婚したメルリーを笑う人もいるだろう。
当事者ともなれば、誰でも一様に許せなくなるはずなのに、他人事なら笑って諭そうとする。
両親も何か言われるかもしれない。
『騎士の妻は荷が重かったんじゃないか?』とか。
「確かに未だ騎士の妻は浮気を覚悟しろという風潮はあるが、それはおかしいと思う。
昔、戦などで遠征があった時代は、騎士の高ぶった感情を吐き出すために、現地に娼婦なども派遣されていて、妻以外の女を抱く言い訳に、騎士の浮気は当たり前だと言われてきた。
だがな、そんな時代でも全員が浮気したわけではない。自重できる男もいた。
今の時代、平和な毎日に『騎士だから』と浮気を正当化する理由がどこにある?
頭よりも体を動かすことを好む者が騎士になり、高ぶったものは発散すれば鎮まる。それを性欲として誤魔化しているだけだ。
騎士でも文官でも商人でも、浮気する男はするし、しない男はしない。
女を抱かなければ欲を発散できないということはないんだ。
結婚前から遊んでいたのなら、ブレイズはいずれ同じことをしたかもしれない。
早く離婚してよかったんだ。
まだお前はやり直せるんだから。」
早く離婚してよかった。
そうなのかもしれない。
子供がいたら、簡単には離婚を決意できなかった。
……流れたから、決心できた。
それは確かだから。
「ひとまず、ゆっくり休んだらいい。疲れた顔をしているぞ。荷物は置いてきたのか?」
「ブレイズがあの家を出て行ってから、また取りに行こうかと思って。」
「そうだな。まぁ、慌てることもないか。」
その後、少し部屋で休んだ後、両親と弟と一緒に夕食を食べた。
賑やかな食事は久しぶりで食が進み、母がホッとした様子で見ていた。
これ以上、心配させないように元気にならないといけないと思った。
精神的に疲れていたらしく、夜は、あっという間に眠りにつき、朝まで熟睡した。
メルリーが眠りについた後のことだった。
バーティ子爵家にローザの夫ジムが訪れてきたのだ。
夜勤の者が応対し、メルリーの父へと繋いだ。
「何があった?」
「……今、ブレイズ様が女連れで帰宅し、閨を共にしております。」
「あの家で、か?」
「はい。メルリー様からはブレイズ様の住まいが決まるまでお世話をするように言われましたが……」
ジムもローザも、ブレイズに我慢ならないのだ。
「朝になったら追い出せ。ローザにメルリーの荷物を纏めるように言ってくれ。」
もう二度と、メルリーをあの家に行かせるわけにはいかない。
朝と言わず、今からでも乗り込んでいって追い出したかったが、怒る価値もない男だと思い直した。
離婚した当日に、メルリーと使ったベッドで他の女を抱くとは。
そこまで非常識な男だったとは知らなかった。
メルリーにはこのことは話せない。
話すとしたら、次の幸せを見つけ、落ち着いた頃になるだろうと思った。
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