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しおりを挟む侯爵令息に嫁いだティナは、元々は子爵令嬢だった。
夫であるファルクの猛アタックで半ば無理矢理の婚約・結婚であった。
もちろん、侯爵夫妻は相手が子爵令嬢ということもあり大歓迎とはならなかったが、一人息子に甘く、嫁として受け入れてくれた。
だけど、2年も妊娠しなければ当たりが強くなってくる。
「ティナさん、また妊娠しなかったそうね?やっぱりあなたでは駄目だったのよ。」
「……申し訳ございません。」
「いくら顔が良くてもねぇ、嫁の務めは子供を産むことよ?
あと1年、子供ができなかったら離縁させますからね。いいこと?」
「……はい。」
「愛人に子供が出来るより離婚した方があなたのためよ?
侯爵家の跡継ぎのためには、誰かが産む必要があるの。理解してくれるわよね?」
新しい嫁はどこの令嬢がいいかしらね~?と言いながら義母は去っていく。
……1年待たなくても離縁したいんですけど?
夫であるファルクは私を今でも愛してくれている。顔と体をね。
月のもの以外の日は、毎晩のように飽きもせずに私を抱いている。
正直、妊娠しないのが不思議なくらい。
妊娠には相性が合う合わないがあると言うけれど、どちらかが不妊体質なのかもしれない。
そう思い、半年前にこっそり調べた。結果は夫の子種が原因と思われるとのこと。
本人は知らない。私も誰にも言ってない。
体の相性は、おそらく良いと思う。
夫はいつも私の体が今までで最高だって言う。……何人知ってるの?興味ないけど。
「んん……っああ。もうダメ。イきそうっ!」
「…あぁ、ティナ、ティナ、最高だ!君の中は。もう出る、出すよっ!…あっ!」
ちゃんと私も気持ちいいし、何度もイかせてくれるし。
体は満足してる。でも、愛情はちっとも湧かない。
「ティナ、今日の子種がきっと実るよ。そうすれば、母もおとなしくなる。愛してるよ。」
私のお腹を撫でながら、薄っぺらい愛を語る夫。それに笑顔で答える私。
「……ええ。」
お義母様にグチグチ言われている私をかばいもしないけどね。
ある日、私付きの侍女ウルがこっそり情報を仕入れて来た。
「ティナ様、侯爵夫人は公爵令嬢レーシア様を後妻に考えておられるようです。」
「レーシア様…知らないわね。何歳なの?」
「16歳だそうです。公爵様の愛人の子らしく、貴族に嫁がせるために昨年引き取ったとか。
ファルク様と接触させて様子を見ると既に親同士で話は纏まっているようです。」
「…そう。ふふ。それって、公爵様の思うツボじゃないかしら。
おそらく、レーシア様は既成事実に持ち込むはずよ。
そしてファルク様は責任を取らされる。子爵家出の私を追い出して公爵家出の嫁をもらう。」
「そうでしょうね。ファルク様はまんまと嵌まるでしょうし。」
「マイクにお願いしてくれる?レーシア様の尾行とこれまでの足跡調査を。」
ウルもマイクも侯爵家の使用人ではあるけど、私付きなのでいろいろ味方になってくれる。
「かしこまりました。ですが、レーシア様をどうするおつもりですか?」
「どうもしないわよ?既成事実は大歓迎。
気になっているのは、レーシア様が純潔かどうか、かな。」
「……違うと思います。」
「そうよね。
庶子を後妻にするなんて、公爵様の企みが透けて見えるのに侯爵夫妻は気づかないのかしら。」
私はかなり性格が悪い。自分が逃げるために教える気は更々ない。
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