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しおりを挟むシグルドが王位にそんなに近いということをユリアはすっかり忘れていた。
そう言えば、王家は一時派閥で面倒なことになりかけたと聞いたことがあった。
現国王とシグルドの父バードンは兄弟。2歳違い。
王太子になったのは現国王だったけど、弟バードンを押す声も多くあった。
現国王は温厚で少し頼りないと言われていたらしい。
王太子妃になれる伯爵位以上の令嬢の中で、ちょうど合う年齢の公爵令嬢がいなかった。
なので、現王妃は侯爵令嬢だった。
バードンは、兄に男子が産まれたら結婚しようと考え婚約者がいなかった。
だが結局、年の離れた公爵家の一人娘の婿になることが決まった。
公爵令嬢が結婚できる年になるまでに、王太子にも子供ができるだろう。
王太子である兄に跡継ぎが産まれると、自分を押す声も消えるだろうとバードンは思った。
王太子にようやく王子が産まれた頃、公爵令嬢とバードンは結婚した。
それでもバードンを押す声があったため、数年間子供を作らなかった。
やがて、兄に第二子ができたと聞いて、バードンもようやく子供を作った。その子がシグルド。
兄の第二子は女の子だった。
兄の妻は侯爵令嬢。弟の妻は公爵令嬢。
そのため、シグルドを押す声まで上がった。
バードンは、シグルドを公爵家の跡継ぎにするために子供は一人だけにした。
公爵家は妻の家。
バードンに愛人をあてがったとしても、他の女性が産んだ子供が公爵家を継げるわけでもないし、庶子を王族にするわけにもいかないので、結局はバードンとシグルドを押す声も無くなった。
やがてバードンの兄が国王となり、息子が王太子。その王太子にも息子が2人いるため、現王家は安泰となった。
なのに、その王太子と息子2人を排除するつもりだったのが隣国なのだ。
「隣国の前国王は待てなくなったんだろうな。
孫が王太子と婚約しても、さらにその子供が産まれるまで生きているのは難しい。
手っ取り早く、娘たちを王妃にして属国にしようと考えた。
まぁ、好戦的な国王にしてはまだ平和的な部類なんだろうな。
王太子や王太子の子供の排除だけなんだから。」
「シグルドは興味ないのよね?王太子や国王の座に。」
「ないよ。全く。決定権はあるとしてもお飾りに近い地位だからな。
王族だけで国をつくっていけるわけじゃない。
意見を聞く必要はあるけれど、現王族に問題があるわけでもないし。
だけど、僕を有力貴族令嬢と結婚させて、子供を王家に戻したいという奴らもいる。
現王太子妃と違う派閥だな。本当にどうでもいい。
だからさ、ユリアがいいんだ。」
「……何がいいの?」
「僕の結婚相手に。僕とユリアが結婚すれば、子供を王家にって考える連中がいなくなる。
現王家も平和で、うちの公爵家も平和。」
「……やだ。無理。無事に生きられる気がしない。」
「大丈夫。問題ない。ちょっと面倒な侯爵家があるだけだから。
その令嬢をけしかけられる前に婚約しよう。」
「何言ってるのよ!あなたのご両親が私みたいなのを嫁と認めるはずがないでしょ?
領地もない、両親もいない、ただの侍女なんだから。」
「両親は何も言わないよ。僕の選んだ女性ならいいって。
王家や僕を利用しようとする貴族に振り回されず、好きな女性と何人も子供を作ればいいって。」
「え……シグルドって本当に結婚したいほど私のことが好きなの?」
好意はあるとは思っていたけれど、それは体の関係にひっぱられているところがあると思っていた。
「好きだよ。あの東屋で話す前から、可愛いなぁって思ってた。」
え?名前だけじゃなくて本当に知ってたの?
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