愛人の娘だった私の結婚

しゃーりん

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新年の夜会の数日後、王妃からお茶会の誘いがティアナに届いた。

王妃のお茶会は少人数制で定期的に開かれており、母もよく呼ばれていた。

ティアナが呼ばれたのはバーク侯爵夫人になって初めてのことだった。 


「あの王妃のお茶会か。ティアナは若いから会話に困るだろうな。」

「どうしてです?」


サイラスが王妃のお茶会に出席したことなどないはずなのに。


「ああいうのは、自分たち以外の貴族の噂話を楽しむ場だからな。王妃は普段は耳にすることがないそういう噂話を好んでいるらしい。誰かの恥ずかしい話や内緒話をティアナは知らないだろう?」

「ええ。」
 

ティアナが知らないサイラスの噂話はたくさん出回っているかもしれないけれど。
サイラスの愛人がどこの誰か、何人いるかを耳にしたら、本人に合っているか聞いてみるのも面白いかもしれない。


「ティアナの綺麗な心が穢れてしまいそうなお茶会だから心配だな。体調不良だと言って断るのもいいかもしれない。」

「そんな不敬なことはできませんわ。親しくなれる方がいるかもしれませんし。」
 

綺麗な心が穢れる?
別に綺麗ではないし、本当にそう思っているのであればサイラスの中のティアナの印象がおかしい。

サイラスという男は、本物と作り物、本気と冗談の区別がわかりにくくてティアナは困る。
すべてが本心のように思えて、すべてが計略のようにも思える。

何か月経っても、未だによくわからない男だった。

ただ、社交界で妙な浮き方をしていながらも、人を集める男でもあった。
 



王妃のお茶会で、ティアナは戸惑っていた。

王妃だけでなく王太子妃もいた。
しかし、こちら側はティアナ一人だけだったらしい。

つまりは三人のお茶会。
お茶会?
いや、尋問?
いや、観察?

緊張して挨拶を終えたティアナに、二人はサイラスとの結婚について詳しく聞いてきたのだ。 


「……愛人の子ねぇ。隠して結婚するのは不誠実だわ。」

「妻より先に子を産ませるなんて。」

「愛人は致し方ないところもあるでしょう。ですが、子供は作るべきではないわ。」

「王族ではないのですからね。」


王妃と王太子妃がそのような会話をしており、ティアナはどうしたらいいかわからない。


「失礼なことを聞きますが、ティアナ夫人は、侯爵と閨を共にされているの?」

「はい。」

「夫が他の女性にも触れていると知っていて、嫌悪感はないのかしら?」

「そうですね。そこは私も欲望に正直と言えるかもしれません。嫌悪感よりも自分の快楽が上回っていますので。」


閨事は気持ちいい。
ティアナを抱いてくれるのはサイラスしかいないため、サイラスが求めたら心よりも体が悦ぶ。

そう答えると、王妃と王太子妃は顔を見合わせて頷いた。


「ティアナ夫人、あなた、公妾になる気はないかしら?」


誰の?
といっても、公妾なのだから国王陛下か王太子殿下しかいない。

その二人は目の前の二人の女性の夫なのですが。
 
 

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