愛人の娘だった私の結婚

しゃーりん

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翌週もティアナは二日間、王宮に泊まってディランと閨を共にした。

そしてバーク侯爵家に帰ろうとしたその時、王妃によって止められた。


「ティアナ夫人、帰るのは止めたほうがいいわ。」

「どういうことでしょうか?」

 
夫のサイラスが商談相手を連れて、接待するために王都の屋敷に戻ると報告を受けている。
ティアナは帰りを出迎えなければならない。


「こちらに来てくれるかしら。」


連れていかれたのは国王陛下の執務室だった。
中には王太子殿下もいた。



「バーク侯爵夫人はサイラス・バークが侯爵になる前のことを知っているか?」

「いえ、存じ上げません。」


国王陛下の問いにティアナは答えた。


「サイラスはバーク侯爵家が所有していた国境に近い領地を譲られていた。そこで事業をしているが、違法性があるとわかった。」 

「違法……」


事業のことは全く知らない。
今回の商談にも関係ある? 


「正規の事業に隠れて浮浪者の人身売買をしている。その商談の際に女も献上している。双方合意の上であれば男女のことだから違法で罰することは難しいが、サイラスは脅したり攫ったりしていることがわかった。」


女性を攫って? 


「サイラスの過去の愛人たちも、献上された後は行方不明。おそらく娼館にいるか死んでいるだろう。」
 

まさか、オリヴィアの母親ももう?

 
「そして今回の商談相手が求めたのが、夫人だ。」

「わ、私!?」


私を献上するつもりなら、サイラスは離婚するつもりってこと?
それとも行方不明に?


「サイラスは商談相手を連れて戻っているところだ。夫人は滞在中の閨の相手を求められるだろう。サイラスは夫人に懇願あるいは脅し、相手をさせるつもりだ。」
 
 
商談を纏めるために、妻の体を相手に差し出す夫。
サイラスにとって、ティアナはただの駒の一つ。
妻にしたのもそのつもりだった?  


「状況証拠しかないため、現行犯で捕えたいと思っているのだが。」
 
「ティアナをそんな目に合わせるわけにはいかない!」


そう言ったのはディランだった。


「ティアナ、帰らないでここにいてくれないか?」

「ですが、夫はまだ捕まるわけではないのですよね?いつまでも帰らないわけにはいかないですし、どうしたらいいか……」
 

商談相手の娼婦になりたくはない。

しかし、現行犯で捕えるためには帰らなければならない。
 

「夫人の代わりになる者を手配しようと思う。体調を崩して屋敷に戻れない夫人の代わりに手伝うと言えば、サイラスはその者に接待させるかもしれない。」 


王宮が手配した女性に接待を?
それはないわ。


「そんな危険なこと、他の人にさせられません。それに、よくわからない相手に夫がそこまでの接待をさせるとも思えませんので、私が帰るのを待つでしょう。ですので、私が帰ります。夫に断ったのに私が無理やり強要されたという状況になればいいのですよね?」 

「そうしてれると助かる。では、無理やり事に及ぼうとした時点で捕縛できるよう動こう。」

「お願いいたします。」


ディランの反対を押し切り、ティアナは自分を囮にすることにした。

 

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