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8.
しおりを挟む手紙の内容について真偽を確かめたいとユーフィリアはアディールに言った。
「うん。もし、リディアがオラン伯爵家で大切にされていないようであれば連れ帰ればいい。
私たちの子供にすればいいんだから。」
「……いいの?ここに呼んで。」
「もちろん。ユーフィリアの子だ。一緒に暮らすなら私の子になる。」
「ありがとう。まずは友人の話を聞いてみるわ。
手紙には、痩せていて、髪と手が荒れていて、笑顔がないって書いてあったの。
リディアは8歳になったわ。
8~10歳の子供のお茶会にボルトとアビゲイルと一緒に出たのね。伯爵家以上のお茶会よ。
リディアの婚約者を探すつもりだったのでしょうけど、夫人方はリディアの姿に驚いたらしいの。
伯爵夫妻は常識ある人たちなのに、どうしてそんな姿の孫を何とも思わないのかしら。
アビゲイルとボルトに教育を任せて領地に引っ込んでいるとか?」
「その可能性もあるね。
リディアを手元に置いたのは縁組のためだろうに、どういうつもりなんだろうね?
髪と手が荒れているってことは侍女がついていないんじゃないかな。
それに栄養が足りていない?
そんな感じだな。」
「ええ。王都に向かってもいいかしら。」
「ああ。私も一緒に行くよ。いや、みんなで向かおう。」
「ありがとう。」
ユーフィリアは離婚後、リディアに手紙を書いていいかとボルトに許可を求めた。
しかしそれはやはり却下された。アビゲイルに慣れさせたいから、と。
ならば、誕生日の贈り物は許してほしいとお願いした。
それは認められた。なので、5歳~8歳までの誕生日に贈り物はしていた。
まぁ、お礼の言葉も何もなかったけれど。
いつか、社交界で会えるだろうと思っていた。
どんな女性に成長しているだろう。どんな男性と婚約するだろう。
そばにいることはできないけれど、楽しみにしていた。
それなのに………
リディアの面倒を見る気がないのなら、知らせてほしかった。
ボルトはともかく、オラン伯爵夫妻は信用していたのに。
早急にリディアの様子とオラン伯爵夫妻がどこにいるかを調べるために王都へ向かった。
王都に着いた私たちは、お義父様たちにオラン伯爵夫妻について何か知らないか聞いてみた。
「そう言えば、いつだったか……もう1年半くらい前か?2年も経っていないと思うが……
体調不良で寝込んでいると聞いた。少しして領地に静養に行ったんじゃなかったかな。
まだ姿が見えないということは行ったままなんだな。
すまない。そんなに長い時間が経ってると気づいてなかった。リディアは大丈夫だろうか。」
「いえ、私も気づいていませんでした。
ということは、王都にはこの2年近く、息子夫婦と子供たちだけがいるということですね。」
あの時、アビゲイルのお腹にいた子供は男の子だったと聞いている。
8歳のリディアと3歳の男の子。
ボルトとアビゲイルは2人の子供をちゃんと面倒見ているのだろうか。
侍女やメイドに任せるにしても、リディアが痩せているというのが気にかかる。
「あとね、少しお節介というか、わざとらしいというか、嫌みかもしれないけれど……
ある夫人がオラン伯爵夫人に言ったらしいの。
『尻軽で有名な方を新たな嫁に迎えるなんて素晴らしいですね。お孫さんは息子さんに似てます?』
それを言われた伯爵夫人は意味がわからなかったそうなの。
なので、詳しく聞いたそうよ。
それで、嫁が想像以上に貴族令息たちと関係があることを知ったの。
自分の家の嫁のせいで婚約が破棄になったところもあると知って、真っ青だったらしいわ。
それから少ししてからね。体調不良と聞いたのは。ということは、心労なのかしら?」
オラン伯爵夫妻の領地静養はアビゲイルの過去が原因なのかもしれない。
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