身近にいた最愛に気づくまで

しゃーりん

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月のものが予定日付近を過ぎてもこないため、妊娠している可能性があるらしい。

しかし、環境の変化によりズレる場合があるというので、しばらく様子を見た。 

それからひと月後、妊娠していることが確定した。

セレスティーナとジュディ、2人共だった。ほぼ同時期に孕んだのだ。
 
これでセレスティーナの夫としての義務を果たせた。ホッとした。



「ヴェントス様、セレスティーナ様が酸っぱいものと辛いものばかり食べています。」

「悪阻のせいか?体に影響がない程度なら大丈夫だろう。医師に確認してくれ。」

「わかりました。」


ジュディは悪阻が軽いのか、顔色も悪くないし変わらず動いている。
じっとしているよりも何かしたいそうだ。もちろん、安全に過ごさせているが。


「ヴェントス様、セレスティーナ様が甘いものばかりを欲しがっています。」

「悪阻は治まったんじゃなかったのか?悪阻中に食べられなかった反動か?医師に許容量の確認を。」

「わかりました。」


酸っぱいものに辛いもの、甘いものときたら次はなんだ?苦いものか?大丈夫なのか?
 

「ヴェントス様、大変です。」

「今度はなんだ?やっぱり苦いものか?」

「は?違います。セレスティーナ様が階段から足を踏み外しました。」

「はぁ?医師を呼べ。ケガは?腹の子は大丈夫なのか?」

「医師は呼んでいます。落ちたのは数段ですが私にはどの程度かわかりかねます。」


急いでセレスティーナの元へと向かった。
悪阻が始まった頃からセレスティーナは部屋で食事をするようになり、ほとんど会っていなかった。
久しぶりに見たセレスティーナは少し……ふっくらとしていた。


「先生、ケガと腹の子は大丈夫でしょうか。」

「子供は問題ありません。ケガの方は足首と手首の捻挫ですね。安静にすれば10日ほどで治ります。」

「そうですか。よかった。ありがとうございます。」

「危険ですので、踵の高いヒールを履くのはやめた方がよいかと。」


どうやら踏み外した原因はヒールの不安定さにあったようだ。
妊娠して以前よりも体重が増しているセレスティーナは以前と同じ重心移動で歩けない。

侍女によると、ヒールのない靴を嫌がったそうだ。自分は問題なくヒールで歩けるのだ、と。
密かに自分が太ったことを気にしていたらしく、自分は変わっていないと思いたかったのだろう。

妊婦の体重が増えるのは当たり前のことなのだが。

それに、ヒール靴ではなく高さのない歩きやすい靴にしないと、今回みたいに足を踏み外したり躓いたりして衝撃を受けると流産や早期出産になる可能性もあることは注意を受けていたというのに。 
 

そして安静を言い渡されてベッドで過ごすことになったセレスティーナは荒れたらしい。

『妊娠なんてウンザリ』『もう二度と妊娠しない』『早く出してしまいたい』

そう言って………ひたすら食べることに走ってしまった。

手首と足首が治っても、セレスティーナは堕落した生活を続けていると聞いた。




「大丈夫なのでしょうか?無事に子供はを産めるか不安ですが。」


ヴェントスは思わず出産経験者の母に聞いた。


「医師は今のところ大丈夫だと言っているわ。貴族夫人は元々動き回ることが少ないもの。産み月が近づいたら体力をつけるためにも散歩させた方がいいでしょうね。」


セレスティーナは妊娠を理由に、母親である王妃様にお茶に誘われても断っている。

今の姿を王家の家族や使用人たちに見られるのは屈辱だからだろう。

節制すればいいのだが、妊婦だから2人分と言われれば侍女たちの制止も意味をなさないという。

産めば、体型は元に戻る。

そう自分を信じ込ませているらしい。
 


  
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