両親のような契約結婚がしたい!

しゃーりん

文字の大きさ
7 / 16

7.

しおりを挟む
 
 
父が昔聞いた話の内容はこういうものだった。


ある令息と令嬢がいた。2人は幼い頃からの婚約者だった。
政略で結ばれた婚約だが、とても仲が良く結婚するのを楽しみにしていた。

結婚式まであと半年という頃、令息がある女性に声をかけられた。
同級生で男爵令嬢。もちろん顔は知っていたし話をしたこともある。
明るくて親切な女性という印象だった。

女性は、令息に『結婚まであと半年だそうですね。閨の経験がないままで大丈夫ですか?』とこっそり聞いてきた。

令息は、女性に『初めては彼女と一緒に経験すると決めているんだ』と恥ずかしそうに言った。

だが女性が、『初めて同士は失敗しやすいですよ。一度の失敗は後に響きます。男性が前もって経験するのはそういう理由があるからですよ』と言った。
この令息はいかにも奥手で経験がないことなど女性にはわかっていた。

令息は悩んだ。婚約者と初めてキスをした時も歯が当たって痛かった。
失敗が後に響くとはどういうことか。 
不安になった令息は、その女性にどうなるのかを聞いた。

女性は、『一度失敗すると、二度目は焦るそうです。その焦りがまた失敗を呼ぶ。そして不能になるそうですよ』

そう囁かれた令息は、一層不安になった。

女性は、『女性と違って男性は初めてかどうかはわかりません。婚約者には初めてだと思わせて経験しておくことをオススメしますよ。よくあることです。そう、誰にでも』と追い打ちをかけた。

令息は、『こっそり娼婦に教えてもらうことにするよ』と言った。

しかし女性は、『娼婦は時々病気を持っています。それに誰に見られるかもわかりません。私が手伝います』と言った。

女性は、訳あって既に純潔を失っているから普通の結婚はできない。
学園卒業後は誰かの愛人になるだろうから、その前に令息を手伝いたいと言った。 

令息は、この女性の申し出を善意からのものだと感謝して、関係を持った。

気持ちいいキスの仕方から、女性の体の感じるところ、攻め方、体位、達した後や行為後のケア方法など、一度だけのつもりが女性のアドバイスが次から次にと続き、15回ほど関係を持った。勉強のつもりだった。

そして卒業式直後、結婚式のふた月前に女性は婚約者の令嬢にバラした。

『彼に女の体を教えてあげたから初夜も楽しめるわよ。私は愛人になるからよろしくね』と。

令嬢は婚約者の令息に問い詰めた。

すると、令息は女性とのやり取りを話した。不安になった、と。

令嬢は、『全部、一緒に、初めてを経験するって約束したじゃない!』と泣いて怒った。

令息は、ひたすら謝り続けた。どうして女性の言うことを信用してしまったんだろう。
失敗するなんて決まっていないのに。事実、女性とは何の問題もなかった。
失敗したとしても婚約者となら乗り越えられたはずなのに。
そうだ。初めてを一緒に経験すると約束したじゃないか。
もし、浮気を知られずに結婚していたとしても、初夜で今更初めてのフリができないほど経験がある。 
騙せるわけがない。誘いを受けた時点で裏切ったのだ。

もちろん、愛人にするなんて言った覚えはない。
愛人狙いだったのか仲を壊すことが目的だったのかわからないが、愚かだったのは自分だ。 

結婚式を今更中止にするわけにはいかない。
政略結婚なのだから。

だけど、令嬢は納得がいかず、どうすればいいのか感情がぐちゃぐちゃだった。

そこに、従兄が相談に乗ってくれて仕返しすればいいと言った。協力すると。

令嬢は従兄と関係を持った。純潔を失った。結婚式までに数回関係を続けた。
もちろん、令息にも純潔でなくなったことは伝えられたが、令息は怒らなかった。

それでも、予定通り2人は結婚した。
結婚式も初夜も新婚生活も、思い描いていた楽しい幸せな時間とは程遠かったが、徐々にまた心を通わせ始めた。

しかし、すぐに妊娠して、出産。産まれてきた男の子はどう見ても従兄の子だった。
結婚後は従兄と体の関係はなかったが、結婚式直前まで関係があったためだった。

男側の浮気は両家とも知っていた。だが、女側の浮気は知らなかった。
自分の浮気が原因だからと、男は子供を育てるつもりだったが、両親が許さなかった。
結局離婚して、令嬢は修道院、子供は従兄に引き取られた。
従兄は既婚者だった。妻は男の子を産んでいなかったためだ。 

離婚した男は再婚したが、不能になり養子をとった。


 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。

しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。 そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。 王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。 断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。 閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で…… ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。

居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。 父親は怒り、修道院に入れようとする。 そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。 学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。 ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。

要らないと思ったのに人に取られると欲しくなるのはわからなくもないけれど。

しゃーりん
恋愛
フェルナンドは侯爵家の三男で騎士をしている。 同僚のアルベールが親に見合いしろと強要されたと愚痴を言い、その相手が先日、婚約が破棄になった令嬢だということを知った。 その令嬢、ミュリエルは学園での成績も首席で才媛と言われ、一部では名高い令嬢であった。 アルベールはミュリエルの顔を知らないらしく、婚約破棄されるくらいだから頭の固い不細工な女だと思い込んでいたが、ミュリエルは美人である。 ならば、アルベールが見合いをする前に、自分と見合いができないかとフェルナンドは考えた。 フェルナンドは騎士を辞めて実家の領地で働くために、妻を必要としていたからである。 フェルナンドとミュリエルの結婚を知ったアルベールは、ミュリエルを見て『返せ』と言い出す、というお話です。

従姉の子を義母から守るために婚約しました。

しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。 しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。 再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。 シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。 ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。 当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって… 歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。

突然の契約結婚は……楽、でした。

しゃーりん
恋愛
幼い頃は病弱で、今は元気だと言うのに過保護な両親のせいで婚約者がいないまま18歳になり学園を卒業したサラーナは、両親から突然嫁ぐように言われた。 両親からは名前だけの妻だから心配ないと言われ、サラーナを嫌っていた弟からは穴埋めの金のための結婚だと笑われた。訳も分からず訪れた嫁ぎ先で、この結婚が契約結婚であることを知る。 夫となるゲオルドには恋人がいたからだ。 そして契約内容を知り、『いいんじゃない?』と思うお話です。

処理中です...