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しおりを挟むルチェリアにはレンフォード以上の人などどこにもいない。
「ルチェリアがちゃんと真剣に結婚について考えていたことはわかっていたわ。
どんな相手なら幸せになれるか、条件を書き出していたそうね。
その条件に合う人と契約結婚しようと思っていたって聞いたわ。
あなたはレンが好きだから、恋愛からの婚約は初めから諦めてしまったのね。
私たちが婚約してから恋愛したって言ったから、自分もそうしようと思ったのだろうけど。
だけどね、前提条件が違うわ。私たちはお互いに好きな人はいなかった。
だから、婚約後に自然と恋人にもなれたの。
条件に合う人がいたとしてもあなたは婚約できなかったでしょうね。
恋愛結婚できないと思った時点で、ルチェがレン以外選ぶことは幸せじゃないもの。」
お母様がため息をついてそう言った。
「義兄上もこれで納得してくれるだろう。ルチェの意志だって。」
お父様は伯父様との仲が微妙なのだ。
私をお父様が引き取ったから。
ルチェリアはお母様の妹の子供。元侯爵令嬢である。
3歳の時、両親が事故で亡くなった。
侯爵家の跡と継いだ父の弟に引き取られるはずだったけど、跡継ぎを自分の息子にしたい弟の嫁と揉めたらしい。
ならばこちらで引き取ろうと今度はお父様と伯父様で揉めた。
決め手は、私がお兄様と一緒にいることを望んだから。私は公爵家に引き取られた。
それからずっと、私はお兄様と結婚すると言い続けてきた。
従兄妹でも結婚できる。
両親もお兄様も、そのつもりでいた。
だけど、伯父様が他の令息との出会いを望んだ。
恋愛結婚が主流なのだから、学園に入ればレンフォード以外に好きな人ができるかもしれない、と。
姪として可愛がってくれるが、伯父は典型的な高位貴族。愛人もいる。
政略でも恋愛でも結婚で他家と縁を繋ぐべきなのに、レンフォードと結婚しては意味がない。
なので、私たちの結婚には断固反対だったのだ。
こうして、ルチェリアは一大決心をして結婚相手に望む条件を考え始めたのだ。
レンフォードとのことは一旦置いておいて、真剣に考えたつもり。
そうすることが伯父を納得させたいレンフォードの望みでもあったから。
だけど、あんな誰もが結婚に望むような簡単な条件に頷く令息がいないのだ。
誰も彼も一度くらいは浮気するかも?なんて考えているから。
それで爵位を追われるのは割に合わないのだろう。
お兄様なら、躊躇することなく頷いてくれる。
そう信じられる。
そして、レンフォードはルチェリアが契約したいと思える相手を見つけることができるとは初めから思っていなかった。
自分以上にルチェリアを愛し、大切にできる男などいない。
それをわかっているルチェリアが、他の男で満足するはずがない。
そう信じていた。
そして、やはりルチェリアはレンフォードを選んだ。
「兄にルチェはやっぱりレンを選んだって言うと、結婚するまで引き離すでしょうね。
ルチェ、卒業までの1年間、伯父様の家で暮らすことになるわ。いい?」
「結婚式は卒業後すぐにしてくれる?」
「ええ。レンもそれでいいわよね?」
「ああ。離れるのは寂しいけれど、会えないわけじゃない。たった1年だけだ。
結婚式の準備もある。毎週帰って来たらいい。」
婚約を発表してしまうと、同じ屋敷に住んだままであることは外聞が悪い。
面倒な話ではあるが、それが貴族。
レンフォードが卒業して、ルチェリアが3年生になる前に婚約を発表することになる。
学園にまだ通うルチェリアを守るため。
婚約者の決まった公爵令嬢に手を出す愚か者は誰もいないだろう。
そんな姿を見られただけで、おそらくその者は男であろうが女であろうが翌日から学園に来ることはなくなる。
それくらい、教師からも守られることになる。
こうして伯父を納得させるために始めた、レンフォード以外に目を向けるルチェリアの契約結婚計画は約2年半で終えることになった。
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