記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん

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マイラが部屋を出て行き、ダイアナは寝室から出て隣の自分の部屋に入った。

大きくは何も変わっていない。
ただ、この部屋もカーテンとソファのクッションが変わっていた。
 
そして衣裳部屋のクローゼットの中には、見覚えのないドレスが何着もあった。 
アクセサリーや髪飾りも同様に。


「わたくしではないわたくしの好みだったのかしら?」
 

淡い水色、紫色が多いように思う。

以前は、ダイアナの婚約者、ジルベール王太子殿下の金髪と琥珀色の眼の色合いの物が多かった。 

青みがかった銀髪に紫色の眼のダイアナにはどちらかと言えば、水色や紫色の方が似合う。
 

「今日は学園はお休みなのかしら。」


着替えるために準備されているのは制服ではなかった。

一人で着替えたことはない。
けど、着替えてみようかしら?なんて思っていると、マイラが戻ってきた。


「旦那様の侍従の方にお伝えするようお願いして参りました。ひとまず、朝の支度をさせていただきます。」

「今日は週末なの?」

「はい。学園はお休みの日でございます。」

「そう。じゃあ、お願いね。」


ダイアナの記憶では、週末まであと一日あった。 

自分に、ここ一年ほどの記憶がないというのは確かなことなのだろうという気がしていた。





朝食前に話を、ということでサロンで両親を待っていた。


「ダイアナっ!記憶が戻ったのか?」


父が嬉しそうにサロンに入ってきた。
少し遅れて母も入ってきた。 


「おはようございます。お父様、お母様。記憶が戻ったと言われましても、わたくしにとっては昨日と今日は続いておりますの。17歳になったばかりですのに、18歳になったと聞いて驚いているのはわたくしの方ですわ。」

 
髪の長さにも少し違いはあったものの、一番違いを感じたのは胸だった。
膨らみが前よりも大きくなっており、腰は細く、大人の女性の体つきに変化しているのを感じた。


「……まさか、この一年の記憶はないのか?」
 
「ええ。何も覚えておりませんわ。何か変わったことはございましたか?」


18歳になったのであれば、あと二か月ほどすれば学園を卒業することになる。
卒業して一年後にはジルベール王太子殿下と結婚することになっているけれど。


「まさか、わたくし、何もかもを忘れて学園を留年してしまいましたか?」


勉強についていけず、二年生をやり直しているのかもしれないと気づいた。
 

「いや、ダイアナの記憶にない一年間のダイアナは、知識やマナーは忘れていなかったから大丈夫だ。」


留年はしていないらしい。


「ではわたくし、何を忘れていたのですか?」

「人だよ。誰のこともわからなかった。自分のことも、我々家族も、使用人も、友人も。」
 

あら。記憶喪失って不思議だこと。 


 
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