記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん

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朝、ダイアナはいつものように目を覚ました。 
 
いつもと変わらない朝を迎えたと思っていた。
それなのに、日の光が漏れ差し込む明かりですぐに違和感を感じて起き上がった。

まず、ベッドシーツと上掛けカバーの色が違う。
そしてカーテンの色が違う。

ベッドやサイドテーブル、ナイトランプなどは同じなのに。 


「わたくしの部屋、よね?」
 

寝ている間に違う部屋に移動させられたかとも思ったが、自分の部屋のように思える。


「でも、昨夜はこのカーテンじゃなかったわ。というか、こんな色にしたことがないわ。」


自分の部屋と似た部屋に頭が混乱している時、扉がノックされて侍女が入ってきた。


「ダイアナお嬢様、おはようございます。」

「おはよう。リサはどうしたの?あなた、マイラだったかしら。」


入ってきた侍女はマイラという名前だったはず。
ダイアナの専属侍女ではない彼女が入ってきたことに疑問を感じた。

今朝の担当はリサのはずで、リサではなくマイラが来たことでリサの体調が悪いのかと思った。
 

「リサってダイアナ様の専属侍女だったリサさんのことですか?」

「そうよ。”だった”ってどういうこと?」

「リサさんは半年以上前にお辞めになったじゃないですか。結婚するからって。お忘れですか?」
 

マイラがカーテンを開けながらそう言った。
 

「何を言っているの?昨夜もいたじゃないの。」


ダイアナがそう言うと、マイラがハッとしたようにダイアナの顔をまじまじと見てきた。


「失礼ですが、ダイアナお嬢様は今何歳ですか?」

「先日17歳になったばかりよ。それがどうかしたの?」
 

リサの話をしていたのに、なぜ年齢を聞かれたのかがダイアナはわからなかった。

しかも、マイラは分かり切った質問しておいて、驚いている。

 
「ここ、わたくしの部屋ではないのかしら。カーテンとかシーツとか違っているわ。部屋に何かあって眠ったままここに移されたのかしら?」


ダイアナは自分の眠りが深いことは知っている。
なのでやはり、夜中に運ばれて気づかなかったのだと思っていた。 
 

「いえ、こちらはダイアナお嬢様のお部屋で間違いございません。お嬢様は少々……記憶を失ってしまわれたようです。あるいは元に戻ったと言うべきかもしれませんが。」

「記憶を失った?わたくしが?」


だから、カーテンやシーツの色が変わったことを知らない?
リサが退職していたことも。
 

「え……?いつから。」


リサが退職したのは半年以上前だとさっきマイラは言わなかった?


「ちょうど一年間くらいだと思います。先日、ダイアナお嬢様は18歳になられたところですので。
私、お嬢様の記憶が戻ったことを急いで旦那様に報告して参りますね。」
 

記憶が戻った?
17歳から18歳になる一年間の記憶は失っているのに?
 
マイラの嘘だと思いたかったけれど、部屋の違和感が嘘ではないと言っている気がした。


 
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