31 / 42
31.
ダニエルの婚約者だったケイトリンは、自分に非がないように婚約解消することを狙い、ダニエルとダイアナのためを思って自分は身を引きたいのに、父親が許さないと言いふらしていた。
それは、ダニエルという婚約者がいるのにケイトリンには恋人がおり、そのことに目を瞑ってくれていたストーンズ侯爵家を怒らせる結果になってしまったのだ。
「ポッシュ伯爵は、こちらが婚約解消で譲歩しているというのに頑なに認めないと言ってね、それにも困った。しかも、強引に解消しようとするなら破棄にして慰謝料を渡せと言い出したんだ。だから、こちらはケイトリン嬢の浮気の証拠をいくつも出した。」
「……ポッシュ伯爵は、慰謝料を貰おうとして、払う羽目になってしまったのですね。」
解消の時点で受け入れていればよかったと後悔したことだろう。
「まったく、実に愚かだよ。ケイトリン嬢も、慰謝料を貰えると思っていたみたいだし。継ぐ爵位のない男と一緒になることの意味が本当にわかっているのかどうか。」
ケイトリンは慰謝料を手にして、結婚生活の資金にするつもりだったのかもしれない。
しかし、今のような貴族の生活水準を保とうとすれば、あっという間にお金はなくなる。
物欲のあるケイトリンに耐えられるのかどうか。
あるいは実家で結婚生活を送れると思っている可能性もあるが、ストーンズ侯爵家との縁を駄目にしておいて実家に置いてもらえるとでも思っているのだろうか。
ケイトリンとその恋人は一つ下なので、結婚するとしてもまだ一年以上ある。
その間に二人の愛が冷める可能性は高い気がする。
そうなったとしても、もうダニエルの婚約者には戻れない。
「恋に溺れてしまって、現実が見えなくなるということは本当にあるのですね。恋をするなら婚約者にするべきですわ。その方が建設的ですもの。」
「ということは、婚約者になればあなたに恋してもらえるということか?」
「あら。そういうことになってしまいますわね。といっても、以前のわたくしはジルベール殿下に恋をしていなかったようですが。」
どうやら、恋愛の考え方は以前のダイアナとは違うのかもしれない。
「ならば、今のあなたのうちに求婚しておかないとな。
僕は女性が喜びそうな話術もない男だが、幅広い知識を持つあなたと話すことが楽しいと思えた。あなたとなら、どんなことも二人で一緒に前を向いて進めるんじゃないかと思っている。
日に日に美しくなっていくあなたの隣に立つ権利を、愛することが許される立場を得たい。
僕と結婚してくれませんか?」
ダニエルらしい、真っ直ぐな求婚だった。
「二人で一緒に。そう言ってくださるお気持ちがとても嬉しいですわ。求婚をお受けいたします。」
以前のダイアナは、一人で頑張っていた。
そのことの記憶がないダイアナは、話を聞いていて、とても寂しく感じた。
一緒に歩んでくれる人がいれば、今のダイアナも以前のダイアナも笑顔でいられる気がした。
求婚を承諾すると、ダニエルはその美しい顔に綺麗な笑顔を浮かべてダイアナを見つめた。
あなたにおすすめの小説
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。