記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん

文字の大きさ
40 / 42

40.

 
 
ダイアナは、ダニエルに記憶が全て戻ったことを話した。


「そうか!それはよかった。何か思い出したくなかったことはあったのか?」

「いいえ、ダニエル様のおっしゃる通り、わたくし、あまり変わっておりませんでしたわね。
ですが、周りから見た自分を客観的に知って対応することができたお陰で、両陛下やジルベール様と距離を置くことができたのでしょう。いろいろとしがらみのあるわたくしではなかなかできないことでしたもの。」 


ダイアナも、両親も、ジルベールとの婚約は解消になるだろうと卒業を待っていた。
国王陛下も、記憶が戻ればダイアナの意思を確認したいと言っていたが、ほぼ諦めてエトワール殿下と婚約者の侯爵令嬢に期待していた。
 
ダイアナでなければならない理由はない。

そのことに気づかせてくれた。
 

「それに、ダニエル様がわたくしに告白されると勘違いされていたことも、親しくなっていった過程も思い出すことができて嬉しいですわ。」 

「勘違いしたことは、僕にとっては思い出してくれなくてもよかったと思うよ。」
 

少し恥ずかしそうなダニエルは、あの勘違いした時と同じに見えた。

親しくなっていったといっても、話の中身は堅苦しいことばかりで、周りから見れば恋仲になる要素はなかったように思える。

それでもやはり、真面目さや誠実さはわかるというもので、知識をさらけ出すダイアナを”女のくせに”と蔑むことなく話に付き合ってくれたというところも、ダイアナにとっては好感を持てるところだった。 

ダニエルを意識し、求婚を受けることにしたダイアナの心情も思い出した。

記憶のないダイアナが築いてきたものを、記憶が戻ったダイアナは受け入れてくれるはずだと思っていたことも。

自分のことながら、自分をわかっていたのだと笑ってしまう。
 

「とてもすっきりしましたわ。ようやく自分を取り戻せた気がいたします。くよくよ悩まず前を向くのがわたくしですわ。これからはダニエル様と共に前に進んでいけること、とても楽しみにしています。」
 

二人で一緒に。
その言葉がとても嬉しかったことも思い出した。 

ダイアナはダニエルと手を握り合い、半年後の結婚を待ち遠しく思った。




 
ダイアナは父に呼ばれて執務室に向かった。


「お父様、ダイアナです。」

「ああ。あの香について、その後の調査結果が出たから話しておこうと思う。」


どの程度、危険性があるのか、調べる必要があったその結果が出たらしい。


「結論から言うと、ほぼ、”気休め程度のまじない”ということらしい。」
 
「…………まじない?気休め?」


つまり、危険性は低いということ?
  


 

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。

私なんてもういらないということですね。ならもう消えてあげます

睡蓮
恋愛
ユフィーレに対してアプローチを行い、自らの婚約者として迎え入れたクルト伯爵。しかし彼はユフィーレのことよりも、自身の妹であるセレサの事を溺愛し、常に優先していた。そんなある日の事、セレサはありもしないいじめをでっちあげ、クルトに泣きつく。それを本気にしたクルトはユフィーレの事を一方的に婚約破棄することとしてしまう。その時だけはセレサからの愛情を感じる伯爵だったものの、その後すぐに伯爵はある理由から大きな後悔をすることとなるのだった…。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。