8 / 36
8.
しおりを挟む妻カトリーヌとは形だけの結婚だと割り切り、ケビンは適度に外で欲を発散させ始めた。
初めは面倒なことがないように、と娼婦を抱いていたが、誘われて一夜の遊びに応じることもあった。
とにかくケビンは苛立っていた。
両親と妻から邪魔者扱いされる自分の居場所を求めるように。
そしてそのうちに誘われることが多くなったのが、ミシュリー未亡人だ。
彼女はケビンより10歳ほど年上の32歳で妖艶な美女だ。
歳が離れていた亡き夫との間に子供はおらず、遺産分与で貰った鉱山が宝の山だったことで、金に不自由なく遊んで暮らしている。
ケビンはミシュリーに気に入られ、月に何度か相手をする愛人になっていた。
もちろん、彼女の相手はケビンだけではないと知っている。
そんな関係が心地良いと思える日々を送っていた。
ある日、高級宿での逢瀬を終え、ミシュリー未亡人を馬車に乗せて見送った時だった。
視線を感じ振り向くと、目を丸くして驚いている女性がケビンを見ていた。
どこか見覚えがある気がして思い返せば、学生時代のクラスメイトだとわかった。
「えっと、ジュリア・クレメンスだったか?」
「……ええ。久しぶり。」
「そうだな。あ、結婚して今はカークスか。」
オリバー・カークスと結婚したはずだから、ジュリア・カークスだと思った。
しかし、ジュリアは首を横に振った。
「さっき、離婚されたの。子供ができなくて。……愛人が妊娠したから。」
「あー、……悪い。そうだったか。」
さっきって、今日のことなのか!?
そういえば、オリバー・カークスは男爵令嬢の愛人がいた。
オリバーは一つ年上だが、ジュリアという婚約者がいても、学生時代から二人は付き合っていた。
クレメンス伯爵家の事業の失敗は耳にしている。
ジュリアよりも男爵令嬢の方がまだマシだと両親から許されて、孕ませたのかもしれない。
「実家に戻るのか?」
「……さっき追い出されたの。自活しろって。」
伯爵令嬢に自活しろだって!?
今、大変なのはわかるが、娘一人置くくらいもできないのか?
「だからここにいるのか。だが、ここは高いと思うぞ?金は続くのか?」
慰謝料を貰ったのかもしれないが、高級宿に泊まり続けるのはヤバくないか?
「働こうと思ったの。ここに来る途中で、雇ってくれないか頼んでみたけれど、働いた経験があるのか、何ができるのかって聞かれて。答えられなかった。娼婦ならなれるんじゃないかって言われて。」
「まさか、娼館に行ったのか!?」
ジュリアは首を横に振った。
ケビンはホッとした。顔見知りが娼婦になるのは気まずい。
「最後に、手持ちのお金でいい宿に泊まってから明日、行こうと思って。」
「いやいや、ちょっと待ってくれ!」
ここにいたのはそんな理由なのか?
ケビンはチラッと彼女を見た。
ジュリアは、学生時代から大人しい感じの女性だ。
地味、根暗と言われていたのを耳にしたこともある。
そんな女性が娼婦に?
……無理だろう。客が怒り出しそうだ。
ケビンはため息が出た。
647
あなたにおすすめの小説
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・
二人は正反対の反応をした。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
お飾り妻は天井裏から覗いています。
七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。
何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?
遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言
夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので……
短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
このお話は小説家になろう様にも掲載しています。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる