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しおりを挟むジュリアを拾って十日ほどが経ち、ケビンは前回の逢瀬の後にあったことをミシュリー未亡人に話した。
「あらまあ。それは大変でしょうね。その後の様子は見に行ったのかしら?」
「ええ。気になって三回ほど。貴族女性はひ弱ですね。せっかく買った荷物を運ぶことすら難しい。」
ケビンがそう言うと、ミシュリーは声を上げて笑った。珍しいことだ。
「そうでしょうね。侍女やメイドがいて当たり前ですもの。伯爵令嬢だったのであれば当然よね。騎士だったあなたの方が家事も手際よく何でもできそうだわ。」
それは間違いない。
騎士だった時は実家を出て暮らしていたこともあり、だいたいのことはできる。
「ねぇ、そのお嬢さん、私のところに通わせるのはどうかしら?やっぱり家事は教わった方が早いと思うし、簡単な料理もうちのシェフから教わればいいわ。」
「それは……助かります。正直、そう言ってくださらないかと期待していました。」
ミシュリー未亡人は、なんだかんだと面倒見がいい。
ジュリアが自分の身の回りのことができるようになれば、仕事先の世話もしてくれるかもしれない。
「頼られたら仕方ないわね。面白そうだし、楽しみでもあるわ。ちゃんと仕込んであげるから。」
教えるのは使用人であって、ミシュリーがジュリアに直接教えることは何もないと思うが……
まぁ、喜んで引き受けてくれて助かった。
「ジュリア、君に通ってもらう場所がある。家事を一通り教えてくれるそうだ。」
「え、どこに?」
「ミシュリー未亡人の屋敷だ。先日、あの宿で俺と一緒にいたご婦人が面倒を見てくれるらしい。」
「あ、あのとてもお綺麗な方。あの方はケビン様の、……愛人?」
ジュリアはケビンに妻がいることは知っている。
あの宿にいたことを追及されたことはなかったが、そういう関係だということは察していたようだ。
そういえばあの時は、不貞現場を目撃してしまったことに驚いて目を丸くしていたのだろう。
「愛人、と言うのは図々しいかもな。彼女のお気に入りの一人ってとこだ。」
ミシュリーと会う時は、彼女が支払いをする。
ケビンは彼女の欲求を満足させることが望まれる仕事のようなものだ。
もちろん、金を貰っているわけではないので仕事だとは思っていないが、彼女を愛しているかと言われればそうではない。
ミシュリーは彼女好みの体格で若くて体力と精力のある男を望み、ケビンは妊娠や結婚を望まない安心できる愛人を求めていた結果、続いている関係である。
愛という感情ではないが、年上で大らかなミシュリーに甘えているところは確かにある。
煩わしいことを言われない安心感があり、癒されているのだろう。
兄がいなくなった隙間を埋めてくれる、姉のような感じか。
まぁ、実際の姉だったら欲情することはあり得ないが、ケビンにとってミシュリーは意外と近く感じる存在であることは間違いなかった。
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