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しおりを挟むジュリアとミシュリー未亡人の二人と会う時間が無くなったことで、ケビンは寂しい思いがした。
ジュリアを拾う前は、ミシュリー以外の女性とも一夜の関係を持つことはあったが、ジュリアの様子を見に部屋に向かう時間がそれに消えていたのだ。
女性との一夜は所詮、欲の発散であって虚しさを感じる時もある。
ジュリアはそんなケビンの寂しさを紛らわせてくれる存在になっていたのだと気づき、苦笑した。
ケビンは日々の執務はちゃんとこなしている。
そして、なるべく一日に一度はマリアンナの顔も見に行くようにしている。
一歳半になったマリアンナは、残念なことに兄の面影はなく、カトリーヌに似ていた。
カトリーヌは美人であるためマリアンナも美人になるだろうが、兄に似てくれていた方が自分はもっとマリアンナを可愛がったかもしれないというのは誰にも言えない、ケビンの心情だった。
「マリアンナ、父様だぞ。」
マリアンナは兄の遺児で、ケビンがカトリーヌと結婚したことでケビンの養子になっている。
だから、叔父ではなく、父親として接していた。
日に日にしっかりと歩けるようになっているマリアンナが、ケビンを見て嬉しそうに寄って来たので抱き上げた。
「とー。」
「そうだ。父様だ。マリアンナは賢いな。」
マリアンナ専属の乳母と侍女から話を聞き、彼女の成長に頷く。
いつものことだった。
ふと、ケビンは今まで乳母たちの口からカトリーヌの名前を聞いたことがないと気づいた。
「カトリーヌはマリアンナと日にどれくらい接しているんだ?」
ここで会ったことはない。
ケビンも毎日、同じ時間にマリアンナの部屋に来ているわけではなく、眠っている時に来てしまうこともあったが、一度もカトリーヌと出くわしたことはなかった。
「カトリーヌ様は、……滅多にここに来られません。」
「は……!?母親なのに?」
「お子様が5歳くらいになられるまで、貴族夫人のおよそ半数の方が乳母任せでございますので。」
そうか。
昔は、5歳を超えて生き延びたら、家族として接するようになっていた時代がある。
その名残で、よく泣き、言葉の通じない赤子の世話をするのは乳母なのだ。
しかし、その後も家庭教師や侍女に任せて子供に構わない親はいる。
家風によっても違いはあるだろう。
あるいは、本人の性質によるものか。
ケビンは自分の小さい頃のことはほとんど覚えていないが、昔から兄は優しかったと覚えている。
両親からは笑顔を向けられたり褒められたりした記憶はない。
カーマイン伯爵家は、長男だけを可愛がり、次男は冷遇する傾向にある……というわけではないだろう。
単に、兄と比べたらケビンが落ち着きのない子で両親は関わりたくなかっただけだと思う。
だが、実子ではないマリアンナをケビンが毎日のように顔を見ているというのに、母親のカトリーヌが会いに来ていないとは。
やはり彼女は兄を愛していたはずがない。
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