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しおりを挟むケビンが執務室で仕事をしていると、荒々しいノックと共に扉が開いてカトリーヌが入ってきた。
「何だ?いきなり。」
カトリーヌの穏やかには見えない顔を見て、ケビンは眉をひそめた。
「愛人のことよ!」
「愛人がどうかしたのか?」
「お茶会で言われたわ。離婚してあげたら?って。」
愛人とはケビンの愛人ジュリアのことか。
いきなり言われたから何が言いたいのかがわからなかったが、ケビンとジュリアが結婚するためにカトリーヌに離婚を促した夫人がいたのだろう。
「離婚してくれるのであれば大歓迎だが。」
「嫌よ!愛人と別れなさい!!」
「別れる気はない。今更なにを言っているんだか。」
自分の結婚が形だけであり、亡き夫を愛し続けているというのは美談にも聞こえるが、妻に拒まれた夫は裏を返せば被害者だ。
その夫に愛する人ができて仲睦まじい様子を目の当たりにすれば、邪魔者は妻だと周りは認識し始めるだろう。
何も不思議なことはない。
「私を抱けばいいわ。許してあげる。子供も産んであげる。だから別れなさい。」
そう言えば丸く収まるとでも思っているのか?
「自分の立場を保つのに必死だな。だが、俺とお前の関係修復をアピールしたとしても、自分の立場が危うくなったから体を投げ出して、愛人と別れさせたと笑われるだけだぞ?」
美談が嘲笑に変わるだろう。
「なっ!?……もしそうなっても構わないわ。私を抱きたいんでしょう?我慢しなくていいから。」
さっきまで目を吊り上げて怒っていた顔から、急に猫なで声で気持ち悪い流し目を送ってきた。
「いや、別に抱きたいとは思わない。むしろ、アンタに触れたくない。」
何度か夜会でエスコートはしたが、その時くらいしかカトリーヌには触れたことはない。
お互いに嫌々だったこともあり、ほんとうに僅かな触れ合いだったくらいだ。
「信じられないっ!失礼すぎるわよっ!!二度と誘ってやらないんだからっ!!!」
淑女とはほど遠く、そう怒鳴りつけてドタバタと部屋を出て行った。
「……ここまで下品な女だとは思わなかった。」
正直、カトリーヌが体を許すと言うとは思わなかった。
男に抱かれることに拒絶感があるわけではなさそうだ。
やはり、元婚約者への未練か、不貞関係にある状態なのか。
彼女に興味がなさすぎて、狙いがよくわからない。
未亡人としてではなく、次期伯爵夫人として社交したいからケビンと結婚したと彼女は言ったが。
「俺を中継ぎにせず”飛ばし”てマリアンナに伯爵位を継がせるってことは、カトリーヌは伯爵夫人になれないってことなんだが、わかってるのか?」
社交界での立場を気にしているが、いつまでも伯爵夫人になれないことは構わないのだろうか。
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