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ロベルトとのデートは街中に行くことが多かった。
「あー、今月は金欠なんだった。」
「いいわ。私が払っておくわね。」
お茶を飲んだカフェでの支払いの際、ロベルトがそう言ったのは何度目のデートの時だったか。
それからのデートの昼食やカフェ代は、アリーシャが支払うことが続いた。
「あー、美味かった。俺じゃ頼めないものだったから、助かるよ。」
この日の昼食は、普段のデートでは訪れないような高級店をロベルトが予約していて、その支払いも当たり前のようにアリーシャに任せてきた。
今日だけではない。
前に行ったことのある店でも、前は自分の支払いだったから安いのを頼んでいたのだと気づいた。
今はアリーシャが支払うのを前提に、ロベルトは高いものを頼み始めていたのだ。
デートでは基本的に、男性が支払いをするのがマナーとなっているが、女性の方が爵位が高ければその限りではないというのが暗黙の了解でもある。
アリーシャは伯爵令嬢で、ロベルトは男爵令息。
なので、アリーシャが支払うことに不満があるわけではないが、敢えて高いものを注文するロベルトに少しモヤっとした。
「アリーシャの17歳の誕生日のために金を貯めてるんだ。」
恥ずかしそうにそう言ったロベルトに、アリーシャは自分の心の狭さを恥じた。
ある時、街で小さな子供が転び、アリーシャは手を貸した。
子供はお礼も言わずに走り去ったということがあった。
「アリーシャ、ああいうのには手を出さない方がいいぞ。」
ロベルトはそう言った。
目の前で子供が転んだのに?
ロベルトは騎士を目指しているのに、人を助けたり守ったりするつもりがない?
「親切に付け込んで、金目の物を奪って行く手段があるんだ。ネックレスなんかを引っ張られると怪我をするからな。」
帽子や髪飾り、ネックレスにイヤリング、ブローチなど、目についたものを奪われる可能性があるという。
ロベルトはアリーシャを心配して手を出すなと言ってくれたのだとわかった。
「そうなのね。気をつけるわ。ありがとう。」
そういうわりには、あの子供に警戒している様子も見られなかったことに少しモヤっとした。
またある時には、アリーシャが走ってくる馬にぶつかりそうになってよろけた。
隣を歩いていたロベルトは、馬を追いかけるようにして少し走り、叫んだ。
「危ないじゃないかっ!怪我したらどうしてくれるんだっ!」
その怪我をしそうになったアリーシャは、後ろにいた男性に体を支えてもらった。
「大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます。」
「あれ、君の恋人か?正義感をはき違えているね。恋人の身を案ずることが彼の役目であって、暴走馬を追いかけるべきじゃないんだけどな。そもそも馬車道側を女性に歩かせるべきではないしね。」
確かに、もっともな意見だった。
「彼は騎士になりたいので、つい追いかけてしまったのだと思います。」
街の治安維持も騎士の管轄になるから。
「お嬢さんは優しいね。だがもっと大切にしてくれる相手の方がいいんじゃないかな。それでは。」
男性は去り、ロベルトが戻ってきた。
アリーシャを気遣うことなく、馬の主に怒っていたことに少しモヤっとした。
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