駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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7.

 
 
地方の男爵領で職を得たというロベルトに、半年後の王立騎士団の採用試験を受けるのだから王都で待つとアリーシャは言った。


 
「それは駄目だ!離れ離れになるなんて耐えられない。目を離した隙に縁談相手がやってきて結婚させられてしまうかもしれないじゃないか!」

「父はそこまで強引なことはしないわ。あなたを待つと約束すればそれを守るわ。」


ただ問題は、ロベルトが職を得たと言っても、イザークとロベルトでは、イザークの方が有利なこと。
父が許してくれなければ、明日の縁談でイザークに直接断るしかない。 
自分にそんなことができるのか、アリーシャは不安だった。 


「アリーシャ、頼む。そうだっ!このまま駆け落ちしよう!!」

「え!?駆け落ち?」

「このままだとアリーシャは縁談相手と結婚させられてしまう。俺たちが一緒になるには、今逃げるしかないんだ。俺はアリーシャを愛している。ずっと一緒にいたいんだ。アリーシャもだろう?なら逃げよう。絶対幸せにするから。そしていつか、俺たちの選択は間違っていなかったと証明してやればいいんだ!」
 
 
ロベルトはそう言うと、アリーシャの手を引いて走り出した。

え!?このまま、駆け落ち?

しかし、アリーシャは何故か、ロベルトの手を振りほどけなかった。
押しに弱いのだ。
そして、こんなに自分を愛してくれる人は、いないと思ったから。
 

……これが二度目の大きな判断ミスだった。


ロベルトの告白を受けたことと、駆け落ちを受け入れてしまったこと。
この二度の判断ミスは、失敗だったからこそ判断ミスだと後になって気づくのだ。



 
退寮して荷物を持っているロベルトと違い、アリーシャは何も持っていなかった。


「その髪飾りを売ろう!」


質屋を見つけたロベルトは、アリーシャの髪から飾りを外して中に入って行った。


「……卒業祝いに両親から貰ったのに。でも仕方ないわね。」


この時のアリーシャは、どこか非現実的に感じていたのかもしれない。

駆け落ちを、縁談から逃げるための家出のようなものだと感じ、重く受け止めることを避けていた。

それでも、しておかなければならないことはわかっていた。


「ロベルト、両親に手紙を書いていい?」

「……何て書く気だ?」

「自分の意思でロベルトについて行くということを。誘拐と勘違いして探されたら困るでしょう?」

「確かにそうだな。そうしてくれ。」


家では卒業を祝う準備をしてくれているかもしれない。

帰りたい。

一瞬、そう思った。



髪飾りを売って手にしたお金で旅に必要な身の回りの物を揃え、ロベルトが働くことになるチェイス男爵領方面の馬車に乗って王都を出た。



夜、馬車が街に着き、一泊目の宿を探した。


「一部屋でいいかな?」


ロベルトがそう聞いてきて驚いた。まだ結婚したわけではないから。


「あ、ほら。金がもったいないだろう?節約しないと。結婚するまで手は出さないから。約束する。」

「わかったわ。」


確かに、お金は節約したほうがいいと思った。 
こんな旅先で初めての夜を迎えられるほどいい宿に泊まれるはずもないため、ロベルトがそう言ってくれて安心した。

 
そしてようやく、アリーシャはもう家には帰れないのだということを実感した。
 



 
 

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