駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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11.

 
 
ロベルトが王都に旅立ってからひと月が経った。

エリーは寂しい毎日を過ごしていた。
そんな時、ロベルトから手紙が届いた。

《王立騎士団は落ちた。高位貴族家の騎士採用を目指すからまだ帰れない》

エリーは目眩がして倒れそうになった。

その時、エリーは自分が妊娠しているのではないかと気づいた。
月のものがない。食欲もなく気分が悪い。目眩もする。

エリーは不安になり、妊娠したかもしれないから帰って来てほしいとロベルトに手紙を書いた。



それからまたひと月ほど経った時、エリーは久しぶりにニコルたちから声をかけられた。


「エリーの旦那さん、王立騎士団の採用試験に落ちたんでしょう?それなのにまだ帰ってこないなんて、浮気でもしてるんじゃないの?」

「……他にも王都で働けそうなところの採用試験を受けているから。」

「受かると思ってるの?ねぇ、エリー。あなた、見る目がないよね。」


そう言って、ニコルたちは去って行った。

嘲笑しに来たというよりは、エリーに同情していたように感じたのは何故なのか。




街に買い物に来たエリーは、声をかけられた。


「失礼。アリーシャ・コルトン伯爵令嬢?」 


振り向くと、見覚えのない男性がいた。


「僕は、イザーク・オリエントと言います。」

「あっ……縁談の?」

「そうです。覚えていてくれたんですね。」 

 
どうしてイザークがここにいるのか。


「あなたがここにいることはコルトン伯爵もご存知です。その上で、僕が名乗りを上げて会いに来ました。」

「父は知っていたのですか!?」

「ええ。割と早くから。陰ながら様子を見守っていたのです。」
 

見守っていた。父が。知らなかった。


「髪飾りも買い戻しています。あなたがいつか売ったことを後悔すると思って。」

「あの髪飾りを……」


仕方がなかったとはいえ、両親からの最後の贈り物を売ったことを確かに何度も後悔していた。


「ロベルトについて話があります。」


真剣な表情でそう言ったイザークに着いて、エリーは彼が泊まっている宿に招かれた。
彼の侍従も一緒だったし、誰にも聞かれたくない話のようだったから。

侍従がお茶を入れてくれた後、イザークは話を切り出した。


「ロベルトが王都にいることはご存知ですよね?」

「はい。王立騎士団の採用試験を受けに行きました。……落ちましたが。」

「そうですね。そのまま帰って来ないのは、王都で働けそうなところの採用試験を受けていると?」

「はい。そう手紙が来ました。」

「まぁ、全部が嘘ではありませんが。実は彼、男爵家のメイドと浮気しています。」


先ほどニコルも言っていた。『浮気でもしてるんじゃないの?』と。
彼女も知っていたのだ。
だから、『見る目がない』と同情した目で見られたのだ。

ロベルトを信じたかった。
だが、父が動いてイザークがここに来たということは、ロベルトが信用するに値しない男と判断したからだろう。 


エリーはお腹に手を当てた。
どうしよう。この子のために浮気をしたロベルトを許すべき?

イザークに妊娠していることを話し、相談に乗ってもらおうとした時、下腹部に痛みが走った。


「痛いっ……」

「アリーシャ嬢?」


イザークの驚いた顔を目にした後、エリーは意識を失った。 


 

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