駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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34.

 
 
翌日から、ロベルトは学園付近をうろついて学生に声をかけていった。


『一年生?ジョエル・オリエントって知ってるか?』

知ってると答えた学生がいたら、

『ジョエルの髪色は?髪型は?目の色は?』
 
と質問攻めにした。

しかし、そこでほとんどの学生は逃げていくのだ。


「なんで逃げるんだよ。ちゃんと答えろよ。」
 

それは、ジョエルの名前だけ知っていて顔を知らないロベルトを怪しんでいるからだと気づいていなかった。 




「ジョエル、今日もあの怪しいおっさんがうろついているらしいぞ?」


四日目ともなると、声をかけられた人数は増えていた。
教師にも伝わり、警備に追い払われたらしいが、街でも声をかけてくるらしい。
 

「まったく、迷惑だよ。僕の顔を知らない赤の他人が何の用なんだか。」


ジョエルはうんざりしたフリをした。

実は今日、ジョエルは”怪しいおっさん”と対面するつもりでいる。

”怪しいおっさん”ことロベルトの情報は父から全て聞いていた。
ラスという子のことも。

彼らが王都にいることは、ロベルトが勤めていたチェイス男爵家のニックから父宛に届いた手紙で知った。
どうやら母がどこに住んでいるのかがわからず、学園に入学するジョエルの跡をつけるつもりのようだということがわかり、実際、学園の周りをうろついているのだ。

ジョエルは両親と共に、オリエント侯爵家で暮らしており、馬車通学である。
このままだとロベルトがジョエルを見つけるまでに、不審者として捕まるだろう。

しかし、捕まったところで再び現れるに違いない。

それに、ロベルトの思い込みを他で口にされて噂になれば、母が傷つく。
母が傷つけば父は慰めるために、母を部屋に閉じこめてしばらく出てこなくなってしまう。
 
母を父に独占されてしまうのは嫌だ。

だがもちろん、母が傷つく前に、父は動くことにした。



 
「僕を探しているのは、おじさん?」


ジョエルは自らロベルトに声をかけた。


「き、君がジョエル・オリエントか?」


ロベルトはジョエルの顔を知ってから、こっそり跡をつけるつもりでいたために声をかけられてひどく焦っているようだった。


「あのさぁ、迷惑なんだよね。さっさと要件を済ませたいから、あの馬車に乗ってくれる?」


ジョエルは止まっている馬車の二台目に乗るように、ロベルトに言った。


「え……?どういう……、まだ何も……?」


ロベルトは自分が誰なのかも名前すら言っていないのに、馬車に乗れと言われて戸惑っていた。


「いいから。早く。」


ジョエルは御者に扉を開けさせて、ロベルトを促した。

ロベルトが馬車に乗った途端、『ぐはっ!』という彼の声が聞こえたが無視して、ジョエルは一台目の馬車に乗った。


「……馬鹿な男だ。」


そう言ったのは一台目の馬車に乗っていた父だ。

 
「本当に。危機感がなさすぎるね。」


ジョエルはそう父に答えた。
 
 
二台目の馬車には屈強な護衛の男が既に乗っていた。
ロベルトはその男に腹でも殴られて気絶したことだろう。

二台の馬車が向かうのは、もちろん人気のない場所だった。

 

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