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ロベルトは、母との駆け落ちの事実を父がなくそうとしていることに気づいたようだ。
そして自分の身が危うくなっているということにも。
「わ、わかった。ちょっとだけ、金を恵んでくれたら駆け落ちのことはもう口にしない。」
「そうですか。ラス君はどうするつもりですか?」
「あいつはもう15歳だ。一人で生きられるだろ?俺の子じゃないとわかったし。一緒にいる意味がないじゃないか。」
つまり、捨てるんだな。
15年も育てておいて。いや、ラスの誕生日は今日だから16歳になったか。
そのことも忘れてそうだな。
ラスが自分の子ではないと知ったロベルトは、ラスを捨てるような発言をした。
そのことをラスは小屋の奥で聞いていた。
父はラスに全てを聞かせるために、彼をここに連れて来ていたのだ。
ロベルトがいなくなった後の彼が、実母が貴族夫人だと誤解したまま生きないように。
この茶番はむしろ、ラスのためだろう。
「……父さんは、僕が自分の子じゃないとわかったら捨てるんだ。それに僕の母は貴族じゃなかったってことか。というか、実の母に捨てられたのは間違いないね。まぁ、今更母親が恋しいなんて歳でもないけどね。」
そう言いながらもラスは落ち込んでいた。
初めから孤児院で親に期待せずに育つのとどちらがよかっただろうか。
「子爵様があの男に振り回されたお前を気の毒に思って少しばかり金を用意してくださっている。
それと、住む部屋のある仕事先も。行く行かないはお前の自由だが、頼れる親がいないお前は地道に働いて真面目に暮らしていくしかない。どんな仕事も最初は大変だ。楽をして生きたいと思うことも自由だが、悪に手を染めるともっとつらい人生になるぞ。」
小屋の奥でラスを見張っていた男は諭すようにそう言った。
「……部屋があるなら、その仕事先に行こうかな。今のところはもう嫌だし。」
ラスは苦笑した。
カーテンで仕切られた寝場所ではなく、ちゃんと扉がある部屋がいいのは当然だった。
「だったら、雇ってくれた食堂にはちゃんと挨拶に行くんだぞ。お世話になりましたって。急に辞めることになってすいませんって。そういうのは大切なことだ。無責任に逃げるのはよくない。」
「……はい。親じゃなくてもこうして教えてくれる大人がいるって思うと頑張れそう。」
貴族になれるかも、金を手に入れて楽に暮らせるかも、なんて甘い夢は夢で終わった。
ラスは一人、現実を見るしかないのだ。
小屋の裏から出て、男に馬車に乗せられてラスは街に戻った。
食堂に挨拶に行き、新しい仕事場のある街に着く馬車に乗るために。
彼がロベルトに会うことも、王都に戻ることも、もうないだろう。
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