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しおりを挟むジュゼット改めジュリである私が使える部屋の中をあちこち見て回った。
リビング兼ダイニング・簡易キッチン・寝室・浴室・洗面室・衣装室の半面にはぎっしりと本が並び、サイドの壁側には刺繍糸や生地もある。
要するに、暇つぶしになりそうなものは予め準備がしてあった。
とは言え、料理はここで作られるわけではなさそうで、毎食運ばれて来ると思われる。
洗濯にしても、ここではできない。
なんせ、バルコニーもなければ窓もないのだ。
いや、ないというより厳重に塞がれている。が正しい。
ここがどこなのかはさっぱりわからない。
とても静かな場所ということは、王都の街中ではないと思われた。
外が全く見えない。つまり、朝昼晩もわからない。
ようやく、この生活が息苦しいものになるだろうということがわかった。
「必要な物があれば、可能な限りご要望にお応えするようにと伺っております。」
シーラのその言葉に、自分に必要な物が何であるかもわからなかった。
「この衣装室にあるワンピースは着ていいのかしら。」
「はい。お部屋でお過ごしになりやすいシンプルな物をご用意しております。
全てご自由にお使いください。
デイドレスをご希望であれば、ご用意いたします。
他に、書籍も女性が好まれる物をご用意しておりますが、指定していただければご用意できます。」
部屋から出ることができない分、至れり尽くせりな感じではある。
デイドレスよりもワンピースの方が軽くて動きやすいからその方がいいし。
その後、シーラから前に月のものがあった日や周期のことを聞かれて答えた。
「妊娠しやすいと思われる3日間に旦那様は来られると伺っております。
呼び方は旦那様でよいと聞いておりますので、ジュリ様もそのおつもりでお願いします。
もし旦那様のご都合が良ければ、5日後から3日間通われます。
いかがなさいますか?もう少し時間が欲しければ来月でも良いかとは思いますが。」
え?そんな我が儘も許されるの?
だけど、こういうのは先延ばしにするよりもサッサと済ませた方がよさそう。
もうお金も払ってもらっているのだもの。仕事しなきゃ。
「いえ、大丈夫です。ご都合がいいようなら5日後で。」
「かしこまりました。伝えておきます。
夕食をお持ちするまで、ごゆっくりお過ごしください。
それと、扉の前には一応護衛がおります。
もし何かございましたら、扉をノックすると護衛が答えるかと思いますので。」
護衛という名の監視員ね。
好奇心で扉を開けたら、目の前に人がいてびっくりしていたわね。
でも、出なきゃいいんでしょ?開けるのは問題ないわよね?屁理屈かしら。
と言っても、扉が開いてもお互いの顔が見えないように衝立まで置いてあるのに、わざわざ顔を晒しに行く気もないわ。
この時の私は、まだ閨事について簡単に考えていたのだと思う。
知識もそれほどなく、でも、何とかなるんじゃないかと軽く考えていた。
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