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しおりを挟むそして迎えた卒業式の日、寮から荷物を持って学園を出た私を待っていたのはセバスさんと馬車だった。
荷物を渡し馬車に乗ると、一人の女性が座っていた。
40歳くらいのメイドに見えた。
馬車にセバスさんも乗り、後でも説明するが借金返済は終えていることを伝えられた。
そして兄から手紙を預かっているということも。
それから目隠しをされて馬車がどこに向かっているのかがわからなくされた。
やがて馬車が到着し、目隠しをされたまま手を引いて歩かされた。
ソファらしき場所に座ってから、目隠しを外されるとシンプルな部屋の中だった。
「これからここで生活してもらいます。
あなたは何があろうとも契約終了まであの扉から出てはいけません。」
扉の方を向いて言われた。
つまり、鍵がかかっていなくても扉から出てしまえば契約違反ということ。
多額の借金からまた逃げられなくなるのだ。
「それと、あなたは今からジュリ様です。名前がなくてはメイドが呼ぶ時に困りますからね。」
メイドに本名は教えてはいけないということね。
「メイドはシーラという名です。彼女がお世話します。」
よろしく。と挨拶をした。
「ここに来られる男性は、あなたがどこの誰だかは知りません。
子供の母親だと認識してしまうと困るので、知らないでいることを選ばれました。
毎回、薄暗い部屋の中で目隠しした状態のジュリ様とお会いになられます。
ですので、身元を確定するのも難しいと思われますのでご安心を。
男性の方も念のために仮面をされると聞いております。」
「つまり、私の身元を知っているのはセバスさんだけなのですか?」
「そうですね。現時点ではそうです。
ただし、契約書はございますしお金も不明瞭にしてはおりますが動いています。
厳重に保管はしておりますが、男性があなたが誰かを知りたくなれば見ることは可能です。」
「……契約を終えれば、その契約書は破棄されますよね?」
「はい。間違いなく。お望みであれば目の前で破棄いたします。」
よかった。
男性が私の身元を知ることは仕方がないけれど、契約書が残っていればいつか子供が見てしまう可能性もあるから。
何らかの事情があって私に子供を産ませるのだから、子供が生みの親を知ってしまうのはお互い困ったことになるはず。
というか、私を選んだのはセバスさんで男性は全く選定に関与していないことには驚いた。
おそらく何らかの最低条件はあったに違いないだろうけど。
まぁ、逆にその徹底ぶりに感心する。
名前も顔も知らなければ、情を移すこともない。
愛する奥様に子供ができないとか、かな?
ひょっとすると、髪や目の色が私と一緒なのかもしれない。
生まれてくる子供が自分の出生に違和感を抱かないように。
そんな気がしてきた。
セバスさんから渡された、兄からの手紙を読んだ。
借金は全てなくなったということと、私一人に背負わせることになってしまったお詫び、そして契約終了後は必ず領地に帰ってくるようにと書いてあった。
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