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セバスさんというこの男性、貴族ではないのか呼び捨てを希望していたけれど、父親に近い年齢の初対面の男性を呼び捨てにはできず、セバスさんと呼ぶことにした。
セバスさんのいう仕事の依頼内容は『ある男性の子供を産むこと』だった。
ある男性の身元は明かせない。
詮索も許さない。
万が一、誰かわかったとしても声をかけてはいけない。
ジュゼットが卒業後すぐにある場所に連れて行き、出産を終えるまで部屋からは出られない。
男でも女でも一人産めば契約は終了。
出産したことは口外禁止。
産まれた子供の性別は教えない。
目にすることもできない。
抱くこともできない。
閨事の最中は目隠しをする。
男性に触れないように両手は固定する。
苦痛を感じても拒否しない。
閨事の経験もなく知識も浅いジュゼットは上手く想像できなかったけれど、要するに子種を受け入れて子供ができるのを待つ日々になるのだと理解した。
それなのに部屋からは出られない。………暇じゃない?
そう感じたけれど、金額の割に楽な仕事だと思われては契約に支障が出るかもしれないので言わなかった。
「借金の返済はこちらで処理させていただきます。
ジュゼット様は申し訳ないのですが、契約が終了するまではご実家との連絡は断っていただきます。
場所や事情をお話しするわけにはまいりませんので、お手紙も禁止です。」
音信不通になれということなのね。
それで心配しない家族はいないと思うけど、セバスさんは言い包めそう。
「あの、もしも妊娠できなければどうなるのでしょうか。」
「あぁ、忘れておりました。最長50か月の契約となります。
ですが、50か月目に妊娠した場合は出産まで延長となりますので5年契約だとお考えください。
子供が早くできれば早く契約終了となります。
男性の都合によって妊娠していなくても契約が終了する場合もございます。
その場合でも肩代わりした借金を請求することはございません。」
セバスさんは契約書に最長5年だと付け加えた。……それでいいの?
そっか。でも、最長5年なのね。
じゃあ、実家にも期限を伝えてくれれば安心するわね。
「そうですか。わかりました。
あの……実家への借金の返済は私が都合をつけたという連絡をするということですよね?
条件をつけていただくことはできますか?」
「条件、ですか。たとえば?」
「父に引退させて兄が伯爵になること。父に監視をつけて王都への出入り禁止。
伯爵領の街でも一人では行かせない。
自由に使えるお金をなくした上にお金も借りられないようにしたいのです。
つまり、ギャンブルを絶ってほしいということです。」
「いいですね。御父上には反省してもらわないと。
新たな借金でも背負えば、あなたの献身が水の泡になりますからね。」
兄が伯爵になり父の権限を奪えば、父は監視生活を受け入れるしかない。
……私も似たような監禁生活になるのだもの。当然よね?
私が契約した相手がどこの誰だかはわからないけれど、セバスさんを信じて無事に借金が返済されることを願った。
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