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一晩、兄のところに泊めてもらい、セバスが予約した宿へと向かった。
護衛がいるから、というより、誰か第三者が自分の居場所を知っていることに安心を覚えている。
いくら自分が騎士だったとしても、薬を盛られでもしたら抵抗はできないから。
兄に借りた護衛と部屋の中に怪しい者がいないことと疑わしい物がないことを確認した後、護衛は扉の前に、自分はそのまま部屋でセバスを待っていると、時間になって彼はやってきた。
「お久しぶりですね。何か警戒させてしまいましたか?見張りがおりましたが。」
「警戒はしますよ?今更なんの話があるのやら。」
「そう言えば、ご結婚おめでとうございます。驚きましたよ。」
「どうも。それで?彼女じゃなくて僕を呼び出した理由は?」
「あなたが彼女の夫であるならば話は早いと思ったのです。
旦那様がお二人目の子供を希望されております。ジュリ様をお貸しいただきたく。」
カイトは呆気に取られた後、大笑いをしてしまった。
「セバスさん、あんた、頭がおかしいんじゃないか?
愛する妻を他の男にどうぞって貸し出す夫に見えるか?」
「おや。他の男性の子供を産んだ女を妻にした男だからこそ、平気かと思いましたが。」
「………ふざけるなよ。やっぱりお前は人を見る目がないな。
たかが100万の借金を10億と思わせてジュゼットの父親を嵌めやがって。
夫人と同じ色目のジュゼットが初めから狙いだったんだろう?
お前の旦那様とやらは事の顛末を知っているのか?
あの堅苦しいことで有名な男がお前の違法行為を許したか?」
セバスの顔色が悪くなった。当たりだったようだ。
「せ、詮索禁止で契約違反だ。」
「あれこれ調査したわけじゃない。こんなこと、単純に結びつくじゃないか。
子供が欲しいなら、旦那様が愛人をつくって産んでもらえ。
ジュゼットをもう巻き込むな。あんな値段で監禁しやがって。
もう二度と連絡してくるな。
それと、ジュゼットは妊娠中だ。
あの男の子供を産むなんて不可能だ。」
「妊娠中……」
「ああ。結婚したんだ。子供ができてもおかしくないだろう?」
「異父兄弟が……」
「ああ。そうだ。ダメだなんて契約してないだろう?
それにな、もう何があろうとジュゼットに嫌な思いはさせたくない。
家族のために身を差し出すような女性じゃなくて、喜んで産んでくれるような女を探せ。
お前は旦那様に言えないような後ろ暗い手段を使ったってことだよ。」
セバスは出産直後のジュゼットを見ていない。
長い期間、自分のお腹で育てた子供を取り上げられたんだ。
そういう契約だとわかっていても、父親が誰か知らなくても、自分が産んだことに違いない。
悲鳴を上げるような泣き声は、本当に可哀想だった。
世の中には金で子供を売る親もいるくらいだ。
そんな女を探せばいい。
それこそ、隔離し甲斐があるんじゃないか?
結婚したジュゼットは他の男に体を許すような女ではないし、カイトはそれをさせるような男ではない。
だからお前は人を見る目がないと言った。
「ちなみに、前回は借金の捏造、今回は断ったら何をするつもりだったんだ?
……その顔、まさか何も考えていなかったな。
当然貸してもらえるだろうと疑いもしていなかったってことか。あり得ない。」
呆れたようにそう言うと、セバスは自分の失態を自覚したのか、目を閉じてから言った。
「申し訳ございませんでした。
婚約者がおらず、結婚もしていない女性を、と考えてジュゼット様を選んだというのに。
既にご結婚されたジュゼット様にお願いすることではございませんでした。
幸せなご結婚をされたようで、一安心いたしました。ご無礼をお許しください。」
今後は何の関わりも持たないことを約束し、セバスは部屋を出て行った。
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