侯爵の愛人だったと誤解された私の結婚は2か月で終わりました

しゃーりん

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結婚後に里帰りすることは……葬儀以外では多分ないと思うので、フライ子爵家の屋敷とは当分お別れになる。

別れの見送りをしてくれたのは数人だけだった。もちろん、父はいない。

父からもう干渉されることはなくなる解放感と、結婚という未知なる道へ踏み出すことの不安を抱きながら王都へと向かった。

 


ちなみにモリス男爵との顔合わせの場所は、王都のデッカード侯爵邸。元、職場である。

信じられない。

だけどその日、侯爵夫人はお茶会でいないらしい。

それでも、信じられない。

愛人疑惑の女を、また屋敷に入れる?

そういう無神経なところが、夫人の機嫌が悪くなる一因なのではないかとアリーズは思っている。
 

だけど丁度いい。侍女長に預かってもらっている給金を取りに行けるから。

……そう思っていた。


「え?渡した?」

「ええ。旦那様に。」


侍女長はそう言って、デッカード侯爵を見た。


「ああ、君の給金はフライ子爵に手紙を送った中に同封したよ?」


同封……つまり、父の手に渡ってしまったということ。

そう言えば、父は見覚えのある封筒から王都までの旅費を渡してきた気がする。
珍しく気前よく金を渡してくれたと思っていたけれど、あれはアリーズの給金から抜き取った金だったということではないか。 

アリーズはここで僅かな手持ち金を手に入れる予定でいたのに、それすら手に入らず手持ちはほぼない状態になった。
 
ここで破談になれば、領地まで帰ることさえできなくなると思い、気が遠くなりかけた。




「やあ、モリス男爵。よく来てくれたね。彼女が君の再婚相手、アリーズ・フライ子爵令嬢だ。」

「……デッカード侯爵、俺はあなたの愛人を押しつけられるのでしょうか?」

「違う、違うよ。彼女は愛人じゃない。元侍女だよ。妻の誤解だ。思い込みが激しくてね。」


アリーズは顔が引きつるのを感じた。
思い込みが激しいからと誤解を解くのを諦めたから、アリーズが悪女だと噂が広まったのではないか。

しかも、このモリス男爵にも事前に説明していた様子もない。
彼が侯爵の言葉を信じた様子もないことに気づいてもいない。
  

「娘さんの母親になってくれる令嬢が必要なんだろう?彼女は子爵令嬢で身分は申し分ない。違うか?」

「……そうだけど、彼女だと、その、また噂の的になる。」

「噂なんてすぐ次の話題になるから大丈夫さ。この1年半、後妻になりたがる令嬢はいなかったんだろ?」 


モリス男爵は唇を噛みしめて黙ってしまった。
妻が浮気相手と心中というのは、やはり男爵にも問題があったと思われてしまう。
一時は、男爵が逃げる二人を手にかけたんじゃないかといういい加減な噂も流れたほどなのだから。


「私はこれ以上ない縁組だと思っているんだよ?」


デッカード侯爵は反論を許さないと言った風に、モリス男爵に圧をかけた。
こういうところだけは、高位貴族らしい。 


「……良縁をいただき、感謝します。」


結局、モリス男爵とは一言も交わすことなく、婚姻届にサインをした。


そしてそのまま王都を出発し、モリス男爵領へと向かったのだ。  


 
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