侯爵の愛人だったと誤解された私の結婚は2か月で終わりました

しゃーりん

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寝室に入ってきたモリス男爵は、嫌そうな顔でアリーズに言った。


「初夜をしなかったとサリオン・デッカードに泣きつかれたら面倒だからな。」


モリス男爵の頭の中はどうなっているのだろう。
彼の中ではアリーズはサリオン様の愛人。そして要らなくなったから自分の嫁に押しつけられた。

それなのに、捨てられた愛人が捨てた男に泣きつく?
そうしたところで、サリオン様がモリス男爵に何と言うの?『抱いてやれ』とでも言われると?

バカじゃないの?


「俺は、お前に子供を産ませる気はない。俺の跡継ぎはリズベスだ。」


リズベスというのは、モリス男爵の7歳のお嬢さん。
母親が亡くなってからこの1年半、部屋に引きこもっているらしく、アリーズが来ても顔を見せることはなかった。


「避妊薬だ。これを飲め。妊娠したら浮気したと見做すからな。」


避妊薬も完全とは言えないのに。
それに、男爵ではどれくらい安全性のある避妊薬を手に入れているかが不安なところでもある。 
それでも、ここでまた口答えをすると彼は間違いなくアリーズを罵倒し始めるだろう。

険悪になるのも嫌なので、避妊薬を飲んだ。
 

モリス男爵はアリーズにキスをした。
彼は食事の後にも酒を飲んでいたようで、まだキツくにおいがしていた。

いきなりキスを止めたかと思うと、ベッドに押し倒して彼は言った。
 

「ああっ!サリオンの愛人なんかやってた女を丁寧に抱けるか!うつ伏せになれよ。顔見たら萎える。」

「ですから、私はデッカード侯爵様の愛人ではありません。」

「ははっ。サリオンを落とす前に夫人に見つかったのか?高望みし過ぎたんだろ?愛人稼業も大変だな。」

「愛人稼業って……」


ひょっとして、サリオン様の前にも誰かの愛人だったと思ってる?
アリーズが戸惑っている間に明かりを落とされ、うつ伏せにされた。

そこからは最悪だった。

たいした愛撫もなく、痛いと言っても無視。無理やり押し込まれた時は泣き叫んだ気がするけれど、途中でアリーズは気絶したのだろう。

寒気で目が覚めたのはどれくらい経った頃だったのか。

真っ青な顔のモリス男爵と、医師らしき女性がいた。


「奥様、体調はいかがですか?」

「……寒いわ。」

「ひどく傷を負っています。熱が上がってくるでしょう。……何があったか、記憶にございますか?」

「……初夜?」

「ええ。未通の体を解すことなく潤いもないまま無理やり押し込んだのでしょう。強姦された女性と同じような負傷をしておられます。入口は裂け、中も傷ついて破られた処女膜の傷も摩擦によって腫れています。」


でしょうね。ものすごく痛かったもの。


「念のため、ひと月は安静にしてください。治りきる前だと再び傷が開く恐れがありますので。」


それはそこにいる夫に向かって言ってほしい。閨事はひと月間禁止ですよってね。


「この女が未経験だったと言うのか?」

「ええ。そうですよ?間違いなく純潔であったと証言します。
どうやら男爵様は奥様が経験者だとお思いだったようですが、奥様は相当痛がったはずなのに気づかなかったのですか?気絶なさったのですよね?」
 
「……俺を拒絶しているんだと思ったんだ。大人しくなったのは諦めたのかと。」

「ご結婚の経緯は存じませんが、未経験を経験有と偽ることはまず難しいですよ。逆は可能ですがね。」
 

初体験の痛みを知っていれば、痛がる演技ができると聞いたことはある。
でもそれは、何度も経験を重ねていないときに限るのだとか。

慣れた男は騙せないらしいけど。

 



 


 

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