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医師が帰った後、モリス男爵が怒るように言った。
「どうして経験がないと言わなかったんだ!俺はてっきり……」
「私は何度も言いました。デッカード侯爵様の愛人ではない、と。」
「だが、サリオンの前に愛人がいたと思うだろう?王都の噂では当主を誘惑する悪女だと言われていた。」
「モリス男爵様、私は一年前まで学園に通っていたのですよ?卒業してデッカード侯爵家の侍女として10か月働いていました。一体、いつ別の貴族当主を誘惑できるのですか?」
「……学生のとき、とか?」
「私はこれでも子爵令嬢です。婚約者はいませんでしたが、貴族に嫁ぐには純潔が必須だという常識を持っています。もし経験があれば、事前に報告してデッカード侯爵様の顔を潰さないようにしていました。」
後で純潔でなかったとわかった場合、仲介したデッカード侯爵にも非があることになってしまう。
報告しなかったアリーズも責められ、離婚の慰謝料を払うことになったかもしれないのだ。
「……すみませんが、頭が痛いので休ませてもらっていいですか?」
熱が上がってきたようでガンガンしてきた。
「ああ。」
モリス男爵は部屋を出て行き、アリーズは頭と体がガンガンズキズキしながらも痛み止めが効いた頃に眠りについた。
モリス男爵ダッチスは少し前のことを思い出して顔をしかめた。
アリーズを抱いた後、彼女の反応がなかったので疲れて眠ったのだと思っていたのだ。
そんな彼女を放って、自分の身なりを整えると酒を飲んでいたこともあり、自分も眠ってしまった。
そしてふと気づくと、寒そうに震えているアリーズがいた。
薄暗かった部屋が日の出とともに少し明るくなり、彼女の様子が見えた。
はだけた夜着をまとってうつ伏せで苦しんでいる彼女。
上掛けを着ていなかったから風邪でも引いたか。
そう思ったが、よく見れば彼女の夜着だけでなくシーツもあちこちが血まみれだった。
そして昨晩、自分が身を拭ったタオルにも血がついているのを見て、『痛い』と叫んでいたのは嫌がっていただけでなく本当に痛かったのだと気づいた。
確かに、ろくに解すことなく突っ込んだ。
だが、男に慣れた体ならすぐに潤んで馴染むだろうと思っていた。
往生際悪く嫌がる姿が、『男爵如きには抱かれたくない』と言われているように感じてムキになった。
途中で何も言わなくなったのは諦めたのだと思ったのだが、痛みで気絶していたとは。
医師を呼んできてもらう間、シーツの交換と彼女の夜着の着替えを頼んだ。
侍女長ミラからは軽蔑の眼差しを、アリーズの侍女レベッカは眉をひそめていた。
やってきた医師は、『彼女は強姦されたのですか?』と聞いてきた。
違う。夫婦だと答えると、睨みながら『鼻の穴からキュウリを勢いよく突っ込んでみてください』と言われた。
想像してみたが、どうにも大きさが合わない。つまり、裂けて血が出るのも当然ということだ。
慣れていないどころか、初めてで未通の体は濡れるよりも先に恐怖で更に体が硬くなったのだろう。
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